Lクラスミニバンやハイエースじゃなくても大丈夫!
アウトドアや車中泊ブームのなか、本格的なキャンピングカーではなく一般的な新車で、仮眠や睡眠のしやすいクルマを探しているひとも多いはずだ。つまり、普段はごく普通の乗用車として、週末は車内をベッドルームとして活用できるクルマであり、言い方を変えれば、災害時にも役立つ車中泊も可能な室内空間やシートアレンジ性を持っているクルマということだ。
かつては、ホンダS-MXといった、男と女が車内で寝そべることができるのが特技で、それを大きくアピールしたような遊び心満点のクルマが一世風靡した時代もあった(筆者は当時、講談社のホットドッグプレスという雑誌のクルマ記事で”走るラブホ”と名付けたことがある)。だが、今ではそうしたところにフォーカスを当てたクルマは意外に少ないのだが(不謹慎!?)、ここでは、今新車で買える、仮眠や睡眠のしやすい、お手ごろ価格の国産車に的を絞って紹介したい。
ホンダ・フリード+
その筆頭が、コンパクトな大容量ワゴンといえる、コンパクトミニバンのホンダ・フリードに用意される2列シート仕様となるフリード+だ。
ラゲッジボードを上段にセットし、後席をそれに続くフラットアレンジしたときのベッド長はなんと1890mm!! 限りなくフラットなフロアには、寝心地を良くするために専用アクセサリーのマットレスは必要。だが、フロアボードを上段にセットした状態では幅1270mm、天井高にしても975mmもあるため、大人ふたりが横になれるし、座っても寛ぎやすい空間が確保されるのだ。
アウトドア&車中泊用の純正アクセサリーも豊富に揃っているから、自分好みの車中泊カーに仕立てられる点も楽しい。
トヨタ・シエンタFUNBASE
そんなフリード+のガチなライバルとなるシエンタの2列シート版、FUNBASEも、ある意味、車中泊を念頭に置いたコンパクトな大容量ワゴンだ。
後席を倒せば、比較的フラットなフロアは2m以上になり、背の高い人でも真っすぐに寝ることができる。もっとも、カーペット敷きとはいえフロアは硬いから、マットレスは不可欠だ。シエンタFUNBASEがフリード+をリードする機能が、AC100V/1500Wコンセントの装備(HVに44000円のOP)。車内で電気ポットやコーヒーメーカー、扇風機などの家電品が使え、アウトドアや車中泊に大活躍してくれること必至である。
ホンダ・ステップワゴン
Mクラスボックス型ミニバンの2-3列目席フラットアレンジにおいて、フラット度がもっとも高いのがホンダ・ステップワゴン。
よほどの高身長でなく、短時間の仮眠であれば、マットレスなどを敷かなくてもふたり同時に足を伸ばして横になることができる(日産セレナe-POWERは2列目席の座面と、背もたれのつなぎ目の段差が大きいのが残念)。
わくわくゲートモデルであれば、両側スライドドアからだけでなく、バックドア側からも乗り降りできる楽しさ、便利さがある。
ホンダN-VAN
じつは、価格的にも手に入れやすい軽自動車でも、車中泊、仮眠しやすいクルマがある。1台目はホンダのN-VANだ。
すでに車中泊用のカスタマイズカーも数多く販売されているほど。基本は“働くクルマ”ながら、スタイルグレードを選べば、N-BOXのような走りの良さや快適度、シートのかけ心地の良さこそ得られないものの、止まったら怖いものなし!? なのである。
何しろ、ほぼ完全にフラットになるシートアレンジによるベッド長は最大2635mm。高身長の大人が真っすぐに横になれるだけでなく、身長130cmの子どもが縦にふたり寝られるのである。フリード+同様、アウトドア、車中泊用の純正アクセサリーも豊富に揃うから、自身でのカスタマイズは自由自在。自分だけのN-VANを仕立てる楽しみもある。
スズキ・ハスラー
意外性のある車中泊カーという意味では、スズキのハスラーを挙げたい。軽自動車の域を超えた乗り心地の良さが魅力のクロスオーバー軽だが、前席のサイドサポート性よりフラットアレンジを優先したと言うほど、アウトドア、車中泊性能にもこだわった1台なのである。
さすがに軽自動車の室内空間だから、前席の背もたれまで倒した前後席フラットアレンジにはなるのだが、その際のベッド長は何と2040mm。その上、純正アクセサリーとして全長2100mmのベッドマットレス的なリラックスクッション、車体後部に設置するカータープや、ウインドウ全周のプライバシーカーテンまで揃えているのだから、まさに車内で寝てください!! と言わんばかりの、悪路にも強いオールラウンダーなのである。