国産車初のゼロリフトを実現
ボディはNAエンジン同様のフラッシュサーフェイス仕様に加えて、ターボ専用の大型フロントスカートや、左右非対称グリル、専用バルジなども空力効果の高い設計で、国産車初となるCL=0、揚力係数0を実現。燃費にかかわる抗力係数CD=0.40、ヨーイングモーメント係数CYM=0.02(ヨーアングル0.6度時)と、トールボーイであっても横風に強い、空力ボディに仕上げている。
また、チルト機構も備わるガラス・サンルーフも設定されたことで、開放感ある室内を実現。ちなみにカブリオレの発売は1984年まで待たれることとなる。
インテリアは専用グラフィックメーターや、370mmの小径3本スポークステアリング、専用バケットシートが備わりスポーツ性を高めた。
注目は世界初のボディソニック・シートで、オーディオの左右16㎝スピーカー(リヤスピーカーはオプション)とは別に、迫力を出したい重低音は20W×20Wのハイパーアンプがシートに組み込まれたトランスデューサーで振動に変えて、身体に直接伝える機能まで用意された。ホンダでは音楽体感シートと呼んでいたが、高性能カーオーディオの先駆けとして、ホンダは「若者文化を理解して牽引するメーカー」との認知に繋がった。 この時代、ほかの業種も自動車メーカーもそうであろうが、ホンダも開発陣は仕事を楽しんだことだろう。もちろん、採用されなかった機構や技術は多数あるだろうが、シティはニュースにあふれている。涙と汗の結果の新しさは満載だった。
課題は現在も変わらない
初代シティは、現在でいう燃費スペシャルのモデルもあった。ターボと同時に登場したE2タイプは、マイナーチェンジ前のEタイプを上まわる10モード燃費で21.9㎞/L、60㎞定値燃費は25.0㎞/Lを達成。エンジンや軽量ボディと空力の効果で優れた燃費を実現した。 時代に先駆けて消費燃料や平均車速、燃費が表示されるエレクトロニック・ナビゲーターを備えて、ターボに話題が集まるなかでも環境性能も重視したモデルを発売した。ちなみにターボの10モード燃費は18.6km/L、60km定値燃費は27.0km/L。これはギヤ比やトルクの影響だと推察されるが、ターボといえど走り方では燃費がいい一例だろう。
もっとも、当時はこうした環境性能が話題になることは少なくて、もっと走りのモデルが話となるのだが。それもまた、時代を彩る個性的なモデルとなる。
■ホンダ・シティターボ
〇全長×全幅×全高:3380mm×1570mm×1460mm
〇ホイールベース:2220mm
〇トレッド 前/後:1370mm/1370mm
〇車両重量:690kg(サンルーフ装着車700kg)
〇乗車定員:5名
〇最小回転半径:4.5m
〇室内長×室内幅×室内高:1615mm×1310mm×1175mm
〇エンジン型式・タイプ:ER型直列4気筒OHC12バルブ
〇総排気量:1231cc
〇最高出力:100ps/5500rpm
〇最大トルク:15.0kg-m/3000rpm
〇タイヤサイズ:175/7HR12
〇ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/LT油圧式
〇サスペンション:ストラット式
〇当時車両本体価格:76万円(東京地区販売価格)