日産エクサ
1986年に発売した小型クーペ&シューティングブレークの「エクサ」にもTバールーフが用意された。このエクサが凄いのは、Tバールーフは“設定している”ではなく、“全車に標準採用”だということ。思い切った判断である。 さらに、ルーフだけでなくテールゲート(キャノピーモデルはルーフ後半も含む)まで取り外して、開放感を味わえるという自由な発想も斬新。なんでもありの、今から思えばいい時代の、伸び伸びとしたアイデア満ちたクルマだったのだ。感覚としては、ルーフだけでなく車体後部の“囲い”も取り外せる「ジープ・ラングラー」のようなものといっていい。 さすがに自由過ぎたのか、そのアイデアは後継車には受け継がれなかったのが悔やまれる。
日産NXクーペ
エクサの実質的な後継車(「サニーRZ-1」の後継車も兼ねている)となる「NXクーペ」は、さすがにテールゲートを外す遊び心までは継承しなかったものの、Tバールーフは設定(全車標準ではない)。 当時は奇抜なデザインだと思っていたが、今にして思えばスッキリとまとまったデザインのように見えるのは気のせいだろうか。1990年から1994年にかけて販売された。
スズキX-90
スズキ「X-90」というクルマを知っている人は、かなりクルマに詳しい人に違いない。デビューは1995年10月。「エスクード」のショートボディのメカニズムを使ってつくられた、いわばパイクカーだ。
メカニズムはラダーフレームに縦置きエンジンを組み合わせた本格クロカンだが、スタイリングはまるでUFO。2シーターでSUVなのにトランクを備えるという、かなりアバンギャルドな商品企画だ。あまりに奇抜かつ2シーターで実用性が低すぎるゆえに、国内で販売されたのはわずか1348台。それにしても、あの堅実なスズキが、よくこんな企画を通したものである。つくづく自由な時代だったのだ。すっかり本題からそれてしまったが、このX-90もTバールーフを標準採用していた。
まとめ:性能と解放感を高い次元でバランスさせたのがTバールーフだった
ところで、Tバールーフのメリットはどこにあるのか。まず、タルガトップやエアロトップに比べると取り外すルーフが小さく、脱着が容易で気軽に開閉できるのは大きな長所。外したルーフを積む場所を車内に用意するのも容易だ。また、ルーフのバーが“つっかえ棒”になるのでボディ剛性を確保しやすいのもアドバンテージと言える。
コンバーチブルやロードスターといったいわゆるフルオープンのモデルに比べると、開放感という点では劣る。しかし開口範囲が狭い分だけ車体強化が少なく済むから設計や生産が楽になるとともに、ユーザーサイドとしては価格上昇が少なく済むのは大きなメリット。
開放感はどうかといえば、確かにTバールーフはフルオープンモデルに対する違いはなくはない。しかし、その差が大きいかといえば、後ろを振り向かない限りはそう大きなものではないという印象だ。