Tバールーフが目立っていた個性派モデル
オープンモデルといえばマツダ・ロードスターのようにガバッと屋根が開くクルマをイメージしがちだが、すべてがそうとは限らない。たとえばポルシェの“タルガトップ”やトヨタ・スープラ(70型や80型)の“エアロトップ”のようにAピラーだけでなくBピラーも残し、その間の屋根だけを取り外すタイプもオープンモデルに含まれる。マツダ・ロードスターRFやホンダS660などもこのタイプだ。
そして、最近の新車ではまったく見かけなくなってしまったが「Tバールーフ」というのもある。これはタルガトップやエアロトップに対し、Aピラー上部中央とBピラー上部中央を繋ぐ棒を追加したもの。今回は、かつては日本にも存在した、Tバールーフの採用車種に注目してみよう。
日産フェアレディZ
「フェアレディZ」に初めてTバールーフが登場したのは、1980年11月のこと。2世代目の130型だった。その後1983年登場のZ31型、1989年登場のZ32型までは継続して設定された。
トヨタMR2
フェアレディZと並んで、Tバールーフが象徴的だった国産車といえばトヨタMR2。トヨタが作ったコンパクトなミッドシップのスポーツカーだ。
MR2のデビューは1984年だが、Tバールーフが設定されたのはマイナーチェンジを受けた1986年。スーパーチャージャー付きモデルとともに登場した。
日産エクサ
1986年に発売した小型クーペ&シューティングブレークの「エクサ」にもTバールーフが用意された。このエクサが凄いのは、Tバールーフは“設定している”ではなく、“全車に標準採用”だということ。思い切った判断である。
日産NXクーペ
エクサの実質的な後継車(「サニーRZ-1」の後継車も兼ねている)となる「NXクーペ」は、さすがにテールゲートを外す遊び心までは継承しなかったものの、Tバールーフは設定(全車標準ではない)。
スズキX-90
スズキ「X-90」というクルマを知っている人は、かなりクルマに詳しい人に違いない。デビューは1995年10月。「エスクード」のショートボディのメカニズムを使ってつくられた、いわばパイクカーだ。
メカニズムはラダーフレームに縦置きエンジンを組み合わせた本格クロカンだが、スタイリングはまるでUFO。2シーターでSUVなのにトランクを備えるという、かなりアバンギャルドな商品企画だ。あまりに奇抜かつ2シーターで実用性が低すぎるゆえに、国内で販売されたのはわずか1348台。それにしても、あの堅実なスズキが、よくこんな企画を通したものである。つくづく自由な時代だったのだ。すっかり本題からそれてしまったが、このX-90もTバールーフを標準採用していた。
まとめ:性能と解放感を高い次元でバランスさせたのがTバールーフだった
ところで、Tバールーフのメリットはどこにあるのか。まず、タルガトップやエアロトップに比べると取り外すルーフが小さく、脱着が容易で気軽に開閉できるのは大きな長所。外したルーフを積む場所を車内に用意するのも容易だ。また、ルーフのバーが“つっかえ棒”になるのでボディ剛性を確保しやすいのもアドバンテージと言える。
開放感はどうかといえば、確かにTバールーフはフルオープンモデルに対する違いはなくはない。しかし、その差が大きいかといえば、後ろを振り向かない限りはそう大きなものではないという印象だ。