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エンジンルームに吊るすだけ! 車両火災を回避する「お手軽消火剤」を実際に使ってみた

車両火災は1日10件発生、いつ誰にでも起こりうる

 毎年日本のどこかでクルマが派手に炎上してニュースやSNSをにぎわせている。とくに高級車やクラシックカーは目立つので話題になりやすいし、印象に残っている人も多いだろう。

 消防庁の統計によると、車両火災件数のピークは2001年の8453件で、それから徐々に減ってきて2019年は3585件。自動車メーカーや整備業界の努力によって20年弱で半減したわけだが、それでも毎日10件もの車両火災が起こっていることになる。

 ゆえにクラシックカーの火災は氷山の一角にすぎないのだが、新車・旧車を問わず愛車が燃えてしまったらオーナーのダメージは甚大だし、メカニカルな面で旧車の方がリスクが高いことは否めない事実だ。

万全にメンテしてもゼロリスクではなく、燃える時は燃える

 旧車の火災の出火元はエンジンルームからが多く、電装系のショート、燃料漏れ、あるいは小動物など、原因は多くのパターンがある。整備不良による火災は論外として、それでも、どこまでメンテナンスに万全を期しても、運悪く燃えるときは燃えてしまうのが旧車というものだ。リスクを完全にゼロにすることはできないし、良識あるクラシックカー乗りなら、万一の事態に備えて車載の消火器は搭載しているものだ。

 ただ、幸いに初期消火に成功してエンジンルームのボヤで収まった場合でも、通常の消火器をエンジンルームに用いると粉末の消火剤がエンジンルームの細部まで入りこんでしまう。そのため、消化後にエンジンを全バラしてオーバーホールする必要があったり、そのエンジンを諦めることになるケースも多い。

気体の消火剤を感熱式チューブに封入するというアイデアグッズ

 近年、欧米のクラシックカー乗りの間に広まっているのが「BLAZECUT(ブレイズカット)」という自動消火システムだ。といっても見た目は白いチューブだけで至ってシンプルな物体。これは感熱式チューブのなかに消火剤が液状で封入されていて、エンジンルームの上部にセットしておくだけというもの。

 エンジンルームで出火した場合、このチューブが120℃に達した瞬間に溶けて内部の消火剤が気体になって勢いよく放出され、一瞬で消火してくれるという仕掛けである。消火剤は非腐食性の気体なので、作動後に残留物がないのもありがたい。

 BLAZECUTの日本代理店として輸入し始めたのは、大阪のVWヴァナゴン&トランスポーター専門店「GAKUYA」で、国内のさまざまな規制をクリアして2019年から日本に流通開始。なぜVWショップが? といえば、エンジンがリヤにレイアウトされているクラシックVWやクラシック・ポルシェでは、エンジンルームの火災にドライバーが気づきにくいため、初期消火へのニーズがより切実なのだ。

記者のカルマンギアへ実際に取り付けてみた

 1963年式フォルクスワーゲン・カルマンギアに乗っている記者(竹内)は、自分のクルマが燃えたことはないものの、知人にはエンジンルームからボヤを起こした人もいて、他人事ではない。転ばぬ先の杖ということで、迷わず愛車に導入することにした。

 BLAZECUTは長さが2m~4mで、価格は3~4万円程度で流通している。エンジンフードに設置するのでクルマによってサイズを選ぶことになる。カルマンギアの場合は一番短い2mをチョイスした。

 なお感熱式チューブの片方の端には圧力計が付いている。耐用年数は環境にもよるが、5~10年程度とのことだ。

 取り付けはタイラップでエンジンフードの裏に固定するだけ。今回は穴を開けることなくセットすることができたが、クルマによってはエンジンルームに簡単な加工が必要になるだろう。走行中に振動で外れたり、ファンベルトに干渉したり、熱を持ちやすい部分に直接触れたりしないように、しっかりと固定したい。もし誤動作してもエンジンルームには何のダメージも残らないが……。

 エンジンフードの裏がキタナイのは元々なので目をつぶっていただくとして、これで万一の車両火災への心配がかなり減って心の平安を得ることができた。無論、これで100%の消火を保証するわけではないので通常の消火器も車載すべきなのは言うまでもない。

 空冷VWやポルシェに限らず、新車でも商用車でもなんでも、エンジンルームに設置するだけなので利用の幅はかなり広いだろう。とくに貴重なヒストリック・スポーツカーやスーパーカーにも、ぜひ普及してほしいものだ。

 グッズレビューとしては本来なら、実際に作動したリポートもしたいところだが、幸か不幸か、BLAZECUTを装着してから1年少々が過ぎるも、いまだ出火したことはなし。もし万一作動したときはキチンとご報告するつもりなのでお楽しみに!?

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