良くも悪くもカルロス・ゴーン氏に左右されてしまった
終わり悪ければ、すべて悪し。結果的にカルロス・ゴーン氏が日産の社長に就任したことが転機だった。最初は概ね順調であったが、19年間に渡る長期政権になったことがまずかった(のかも)。これは噂の域を出ないが、自分のイエスマンのみを側近に置き、意見するものは排除してきたとか……。これによって独裁性が強まったのだろう。マッチした正しい判断ができれば素晴らしい成果となるが、誤った方向に流れたときに正す人間がいないため、悪い方に転がり続けることが往々にしてある。
前述した新型車の開発戦略だけでなく、ルノー、日産、三菱のアジア戦略もまさにそれで、新興国で予想していた販売台数に届かず、三菱はパジェロを生産していた岐阜工場を閉鎖するとともに、ヨーロッパ市場からも撤退することに。アジア戦略も見直すこととなるなど散々。ゴーン氏退陣は吉と出るか凶と出るか、まだ結果は出ていないものの、日産はゴーン氏が残した正の遺産である電動化技術、自動運転、コネクティビティを軸に復活を模索していくはずだ。
適切な人材がいなかったこともあるが、長期間の現状維持は歴史を見ても問題が起こる可能性はあり、何ごとにおいても新陳代謝は必要。今は内田 誠社長の手腕に期待というところだ。
高いブランド力と先見の目は持っているのだが……
現在、ライトウエイトFRスポーツの代名詞といえばトヨタ86とスバルBRZ。国内だけでも12万台以上が登録され、新型BRZも好調なセールスを記録している。しかし、少し前までこのジャンルは日産の専売特許。他メーカーがスポーツカーをFR車からFF車へ方向転換するなか、日産はシルビアをかたくなにFR車として残し続けた。これにより、ブランド力を高めて一定のファンを得ていたのだが、2002年に生産中止。それ以後、ミドルクラスのスポーツカーは登場することなく、現在は86/BRZがそこに座った。
そのほか、欧州車に匹敵するスポーツセダンとしての先駆者だった初代プリメーラは、レクサスISやトヨタ・アベンシスが、背高ビッグミニバンの道を切り開いたエルグランドは、トヨタ・アルファードにそのポジションを奪われてしまう。
強面スポーツセダンの代名詞であったセドリック/グロリアのグランツーリスモは、クラウンのアスリートが後釜に、オシャレ系コンパクトSUVのポジションのジュークはC-HRに奪われるなど、2匹目のどじょうではないのだが、かつて日産車が得ていたポストをトヨタが次々と奪い取っている。日産は我慢できないのか、決断が早いのか、非常にもったいない!
世界に誇る電動化技術などでもっと“やっちゃえ日産”
最初に書いたとおり、耐えがたきを耐え、反転攻勢の体制が整いつつある日産。イメージリーダーを置いて、得意のe-POWER戦略も絶好調。可変圧縮技術など新しさもあり、さらには国内の主力であるエクストレイルとセレナのモデルチェンジが控えるなど、今の日産はニュースに溢れている。コロナ禍と工場火災によるに部品調達不足なと、拭えない不安がないわけではないが、黒字化に向けて着実に進んでいることは確か。日産が元気じゃないと、国内が盛りがらない。これで手の届くスポーツカーがあれば最高なのだが……。ルノー・アルピーヌがベースでもいいので、ぜひ出してほしい!