ヤマハVMAX1200(1985〜2007)
当時新車価格:89万円(1990国内仕様)
現在中古相場:35~65万円
ホンダとカワサキが300km/hの鎬を削り合うなか、90年代のヤマハはその流れから一歩引いていました。本来はZZ-RもCBR-XXも最高速のみを追い求めたわけではなく、長距離を移動するハイスピードツアラーとして作られたわけですが、ヤマハはこのツアラーという部分を優先したようなYZF1000Rサンダーエースを1996年に登場させます。とは言っても排気量的にも控えめで、市場では完全に影に隠れてしまったのでした。でも心配はいりません。その一方でヤマハには80年代からZZ-Rにも劣らぬ人気の最強モデルがあったからです。それが今回紹介する有名なVMAX。 VMAXはヤマハの北米市場を広げる起爆剤として、徹底的に現地の好みを調査した結果から開発が行われました。そして1985年に生まれたのは、ドラッグレースのスタイリングに1197ccという大排気量&最高出力145ps、しかもそのエンジンは迫力あるV型4気筒と、まさに「マッスル」を形にしたかのようなマシンとなります。
VMAXの145psはデビュー当時の世界最強で、これを支えたのは1気筒あたり1個ずつのキャブレターを6000rpmを境にバイパスさせて、デュアルキャブと同等にしてしまう“Vブースト”という画期的なシステム。このVブーストが効くと暴力的と言えるほど強烈な加速感を見せ、ゼロヨンでは圧倒的なパフォーマンスでライバルを蹴散らしました。ストリートでも無骨なスタイルのVMAXで、流麗なフルカウルマシンをブチ抜く姿には唯一無二の魅力があります。 こうしてVMAXは北米だけでなく、日本でも1990年からは750cc以上バイクの正式発売解禁第1号車として、国内仕様が投入されるほどの大人気モデルに。以後、20年以上のロングセラーとなったのでした。現在の中古相場は35~65万円ほどが主流となっています。やっぱり今が狙い目でしょう。
ヤマハVMAX(1990 国内仕様モデル)
1090年からは国内仕様も出るほど人気が高かったVMAX。ただ、規制が厳しい国内仕様では97psに抑えられ、Vブーストも取り払われているというかなり残念なことになっていた。これにヤマハの純正アクセサリー子会社のワイズギアでは、国内仕様向けVブーストキットを発売するという粋な対応を見せることに。現在では中古で出まわっている国内仕様も多くがこのキットを組み込んでいます。一応、購入前にチェックを。主要諸元■全長2300mm 全幅785mm 全高1175mm 軸距1590mm シート高765mm 車重264kg(乾) 水冷4ストV型4気筒 1197cc 最高出力97ps/7000rpm 最大トルク11.3kg-m/6000rpm タイヤサイズF=110/90-18 R=150/90-15
ヤマハVMAX(1985モデル)
北米市場をターゲットに作られたVMAXだったが欧州でも人気モデルに。フランスでのカタログもゼロヨンイメージでまとめられていました。駆動系にはシャフトドライブが用いられ、猛烈加速でもチェーンへのダメージを心配する必要がなかったモデル。主要諸元■全長2300mm 全幅795mm 全高1160mm 軸距1590mm シート高765mm 車重271kg(乾) 水冷4ストV型4気筒 1197cc 最高出力145ps/9000rpm 最大トルク12.4kg-m/7500rpm タイヤサイズF=110/90V18 R=150/90V15
スズキGSX-R1100W(1993〜1998)
当時新車価格:輸出専用車
現在中古相場:45~65万円
最強最速の王者決定戦におけるスズキの90年代は、雌伏の時代だったと言えるでしょう。当時のフラッグシップであったのはGSX-Rシリーズの頂点となる1100/W。80年代は公道世界最速として名を馳せたこのマシンですが、1991年に登場した油冷エンジン最終型のころになると、145psとパワー的にはZZ-Rに迫る世界最速の一角であるのは間違いないとしても、油冷では水冷と比べて熱ダレに対する耐久性の弱さがいかんともしがたく、後塵を拝するようになっていたのです。
そこで1993年にはついに悲願の水冷化を敢行。ここにGSX-R1100最後の姿となる、GSX-R1100Wが誕生することになったのでした。ちなみに車名末尾には“Water”を意味する“W”もわざわざ追加。この1100Wは、ZZ-Rを上まわる当時最強の155psをマークし、スピードの上でもなかなかの速さを見せたと言われています。 しかし、それまでにカワサキが築き上げてしまった、最速マシンに対するスタイリングイメージが大きかったのでしょうか。車名のとおりレプリカ然としたGSX-Rのスタイリングは、こと日本の最高速を求めるライダーたちに時代にそぐわなくなってしまい、人気ではZZ-Rが圧倒的に上まわることに。
そのため中古相場も当時からそんなに高くなく、今でこそ油冷は絶版車ブームで高値になってしまったものの、水冷の1100Wはまだ安いままで入手できます。そんな不遇と言える90年代のスズキでしたが、次の年代の始まりを飾る2000年に状況を一変させます。正真正銘300km/h突破で今でも大人気のGSX1300Rハヤブサが登場したのです。
スズキGSX-R1100W(1995モデル)
水冷化でZZ-Rを上まわる馬力を叩き出したGSX-R1100W。スイングアームを強化した1995年型以降は、カラーリング変更のみで1999年に生産終了となります。中古市場でのGSX-Rは油冷の方が人気があります。油冷の初期型となると今やちょっとしたお宝扱いに。1100はレプリカ然としたスタイルだが、実際には750と比べてツアラー的な性格となっていました。
主要諸元■全長2130mm 全幅755mm 全高1190mm 軸距1485mm シート高815mm 車重231kg(乾) 水冷4スト並列4気筒 1074cc 最高出力155ps/10000rpm 最大トルク11.7kg-m/9000rpm タイヤサイズF=120/70-17 R=180/55-17
最速最強バトル栄光のファイナリストバイクたちも狙い目
90年代に繰り広げられた最強最速バトルで最後に頂点に立ったのは、なんと雌伏のときをこらえたスズキでした。カワサキも2000年にNinja ZX-12Rを投入しましたが、2台の勝負はハヤブサが勝利します。しかし、その直後にヨーロッパでは過熱した最強最速バトルが社会問題化してしまい300km/hリミッターが義務付けられることとなってしまいました。ハヤブサはリベンジを受けることなく、この争いに終止符が打たれてしまったのです。 そのため今では、ほぼすべてのバイクでメーターに表示されるのは最高でも299km/hまで。320km/hや340km/hまで刻まれた栄光のマシンたちは、もう現れてこないのです。そんなアツい時代を戦ったマシンたちが、50万円以下で手に入るかもしれない現在の状況……、やっぱりチャンスじゃないですか?(※中古相場は10月中旬におけるライター調べの主流価格。中古車の価格は年式・程度・走行距離などでマチマチとなりますので、ご了承を)
スズキGSX1300Rハヤブサ
ノーマル状態のままで正真正銘300km/hを突破してみせた、最強最速バトルの勝者。ライバルたちが次々と生産を終えていくなかで、ハヤブサのみが今年3代目となる新型が登場するなど、今もって健在。さすがにこちらは中古人気も高いが、初期型なら探せば50万円前後でも入手可能でしょう。
カワサキNinja ZX-12R
最速奪還のためにZZ-R時代のエンジンと別れを告げ、完全新設計のエンジンとこれまた新機軸のモノコックフレームを手にして登場。しかし、初期型は相当な技量がないと乗りこなせないクセの強いマシンに。それもあってか中古は40万円台から狙うことができます。