選ばれしライダー減少で需要減? 爆下げの最強最速バイクの現状
90年代におけるバイク界のトレンドは、80年代から続いてきたレプリカ人気からネイキッド人気へと移る一方で、もうひとつのブームが巻き起こります。それが“300km/h”をキーワードとする最強最速マシンたち。もちろんそんなスピードを出せるのは大型バイクだけ。
しかし、最初の頃こそ試験場での免許証の限定解除という狭き門をくぐり抜けた、選ばれしライダーのみが許されたスピードバトルでした。ですが、1996年に教習所でも取得できる大型自動二輪免許が新設されたことで、爆発的に多くのライダーが加わることに。しかも同じようなタイミングで、それまで世界最強の座を思うがままにしていたカワサキに一矢報いるべく、ホンダが威信をかけたキラーウェポンを投入したとあって、ここにストリートを巻き込んだバトルの舞台は整ったのでした。
そんな90年代をアツくさせたマシンたちが、最近のバイクブームで90年代車でも中古相場は爆上げ中のなか、なんと今ならまだ50万円以下でも買えるという事実が! 今回は迷わず狙い目のそんな90年代最強マシンたちを紹介します。
カワサキZZ-R1100(1990〜2003)
当時新車価格:輸出専用車にて逆輸入150万円程
現在中古相場:40~65万円
1984年にやはり当時の世界最速に君臨するべく、カワサキが放ったのが初代NinjaことGPZ900R。908ccで始まったこの初代Ninjaは、その後GPZ1000RX~ZX-10へと排気量を大きくしながら発展し、1052ccとなるこのZZ-R1100でひとつの完成形となります。
しかし、カワサキは手を休めません。ZZ-R1100は1993年にラムエアインテークを左前方1個から両前2個に増やし、車体まわりも強化した2代目へと進化。さらに最強の座を不動のものとしたのでした。そんなZZ-Rも今の中古相場では主流で40~55万円。高くても80万円、安いものになると20万円台から狙えちゃうという超穴場。
ちなみに当時の国内新車価格はと言うと……定価はありません! なぜなら、まだ100ps自主規制もあった当時、流通していたZZ-Rはすべて逆輸入。だいたい150万円くらいで販売されていました。ただ、今回紹介するなかで、将来的にもっとも爆上げしそうなのがこのモデル。カワサキブランドは絶版市場で絶対的な強さがあるからです。
カワサキZZ-R1100(1990モデル)
320km/hメーターで登場した初代ZZ-R1100。俗に“C型”と呼ばれているのは型式名のZX1100Cに由来する。アルミペリメターフレームの堅牢な車体やフラッシュサーフェイス化を推し進めたカウリングなどで、ハイスピード域における当時最高の性能を徹底追及された。中古で安いのは、おもにこのC型です。
主要諸元■全長2175mm 全幅720mm 全高1210mm 軸距1480mm シート高780mm 車重228kg(乾) 水冷4スト並列4気筒 1052cc 最高出力147ps/10500rpm 最大トルク11.2kg-m/8500rpm タイヤサイズF=120/70VR17 R=170/60VR17
カワサキZX-11(1990モデル)
ZZ-R1100は主に欧州向け車両に付けられたネーミングで、北米向けにはZX-11の名で輸出。この北米仕様のみカウルに“Ninja”のペットネームが貼られている。ほかにはサイドリフレクターの有無に外観上の違いがある。
カワサキZX1100D(1993モデル)
2代目となる型式名ZX1100Dの“D型”。このD型は最高出力こそC型と同じ147psでしたが、そのエンジン内部は熟成。さらに改良ラムエアや新作フレーム&スイングアームの採用、ブレーキ強化、カウルの空力性能向上と、全面的にさらなる高速度域への対応が行われました。しかし、そこまでしてもZZ-Rは実際には290km/h前後で頭打ち。それがまた、なんとか“300km/h”の壁を超えようと世界中のスピードアタッカーたちを熱狂させました。
ホンダCBR1100XXスーパーブラックバード (1996〜2003)
当時新車価格:輸出専用車
現在中古相場:40~75万円
実際には300km/hをどうしても超えられなかった前述のD型ZZ-R1100ですが、そろそろモデルチェンジで、いよいよ本当にオーバー300km/h実現か! と思われた1996年。本命はまったく別のメーカーから現れます。それがホンダのスーパーブラックバードでした。
鈴鹿8時間耐久やもてぎ7時間耐久といったレースにも、有力ショップがスーパーブラックバードで挑むなど、大きなムーブメントに。それらレース車両のノウハウは、公道カスタムにもフィードバックされていきました。WITH MEプロフェッショナルチームが製作したマシンはタミヤからプラモ化されるほど注目されています。
ちなみに一番速いと言われているのはキャブレター時代の初代。FIとなった1999年の2代目以降、とくに2001年の3代目からは排ガス規制のために馬力も152psに下がっています。また、この3代目からは100ps&180km/hリミッターも付いた国内仕様も登場。純粋に速さを求めてこのマシンを購入する際は、そのあたりも注意してください。
ホンダCBR1100XX
正式発表前からバイク雑誌のスクープ記事で大きく盛り上がったCBR1100XX。大型自動二輪免許の導入直後ということもあり、中型からステップアップするライダーたちの大きな憧れともなっていました。
主要諸元■全長2160mm 全幅720mm 全高1170mm 軸距1490mm シート高810mm 車重223kg(乾) 水冷4スト並列4気筒 1137cc 最高出力164ps/10000rpm 最大トルク12.7kg-m/7250rpm タイヤサイズF=120/70ZR17 R=180/55ZR17
ヤマハVMAX1200(1985〜2007)
当時新車価格:89万円(1990国内仕様)
現在中古相場:35~65万円
ホンダとカワサキが300km/hの鎬を削り合うなか、90年代のヤマハはその流れから一歩引いていました。本来はZZ-RもCBR-XXも最高速のみを追い求めたわけではなく、長距離を移動するハイスピードツアラーとして作られたわけですが、ヤマハはこのツアラーという部分を優先したようなYZF1000Rサンダーエースを1996年に登場させます。とは言っても排気量的にも控えめで、市場では完全に影に隠れてしまったのでした。でも心配はいりません。その一方でヤマハには80年代からZZ-Rにも劣らぬ人気の最強モデルがあったからです。それが今回紹介する有名なVMAX。
VMAXの145psはデビュー当時の世界最強で、これを支えたのは1気筒あたり1個ずつのキャブレターを6000rpmを境にバイパスさせて、デュアルキャブと同等にしてしまう“Vブースト”という画期的なシステム。このVブーストが効くと暴力的と言えるほど強烈な加速感を見せ、ゼロヨンでは圧倒的なパフォーマンスでライバルを蹴散らしました。ストリートでも無骨なスタイルのVMAXで、流麗なフルカウルマシンをブチ抜く姿には唯一無二の魅力があります。
ヤマハVMAX(1990 国内仕様モデル)
1090年からは国内仕様も出るほど人気が高かったVMAX。ただ、規制が厳しい国内仕様では97psに抑えられ、Vブーストも取り払われているというかなり残念なことになっていた。これにヤマハの純正アクセサリー子会社のワイズギアでは、国内仕様向けVブーストキットを発売するという粋な対応を見せることに。現在では中古で出まわっている国内仕様も多くがこのキットを組み込んでいます。一応、購入前にチェックを。
ヤマハVMAX(1985モデル)
北米市場をターゲットに作られたVMAXだったが欧州でも人気モデルに。フランスでのカタログもゼロヨンイメージでまとめられていました。駆動系にはシャフトドライブが用いられ、猛烈加速でもチェーンへのダメージを心配する必要がなかったモデル。
スズキGSX-R1100W(1993〜1998)
当時新車価格:輸出専用車
現在中古相場:45~65万円
最強最速の王者決定戦におけるスズキの90年代は、雌伏の時代だったと言えるでしょう。当時のフラッグシップであったのはGSX-Rシリーズの頂点となる1100/W。80年代は公道世界最速として名を馳せたこのマシンですが、1991年に登場した油冷エンジン最終型のころになると、145psとパワー的にはZZ-Rに迫る世界最速の一角であるのは間違いないとしても、油冷では水冷と比べて熱ダレに対する耐久性の弱さがいかんともしがたく、後塵を拝するようになっていたのです。
そこで1993年にはついに悲願の水冷化を敢行。ここにGSX-R1100最後の姿となる、GSX-R1100Wが誕生することになったのでした。ちなみに車名末尾には“Water”を意味する“W”もわざわざ追加。この1100Wは、ZZ-Rを上まわる当時最強の155psをマークし、スピードの上でもなかなかの速さを見せたと言われています。
そのため中古相場も当時からそんなに高くなく、今でこそ油冷は絶版車ブームで高値になってしまったものの、水冷の1100Wはまだ安いままで入手できます。そんな不遇と言える90年代のスズキでしたが、次の年代の始まりを飾る2000年に状況を一変させます。正真正銘300km/h突破で今でも大人気のGSX1300Rハヤブサが登場したのです。
スズキGSX-R1100W(1995モデル)
水冷化でZZ-Rを上まわる馬力を叩き出したGSX-R1100W。スイングアームを強化した1995年型以降は、カラーリング変更のみで1999年に生産終了となります。中古市場でのGSX-Rは油冷の方が人気があります。油冷の初期型となると今やちょっとしたお宝扱いに。1100はレプリカ然としたスタイルだが、実際には750と比べてツアラー的な性格となっていました。
主要諸元■全長2130mm 全幅755mm 全高1190mm 軸距1485mm シート高815mm 車重231kg(乾) 水冷4スト並列4気筒 1074cc 最高出力155ps/10000rpm 最大トルク11.7kg-m/9000rpm タイヤサイズF=120/70-17 R=180/55-17
最速最強バトル栄光のファイナリストバイクたちも狙い目
90年代に繰り広げられた最強最速バトルで最後に頂点に立ったのは、なんと雌伏のときをこらえたスズキでした。カワサキも2000年にNinja ZX-12Rを投入しましたが、2台の勝負はハヤブサが勝利します。しかし、その直後にヨーロッパでは過熱した最強最速バトルが社会問題化してしまい300km/hリミッターが義務付けられることとなってしまいました。ハヤブサはリベンジを受けることなく、この争いに終止符が打たれてしまったのです。
スズキGSX1300Rハヤブサ
ノーマル状態のままで正真正銘300km/hを突破してみせた、最強最速バトルの勝者。ライバルたちが次々と生産を終えていくなかで、ハヤブサのみが今年3代目となる新型が登場するなど、今もって健在。さすがにこちらは中古人気も高いが、初期型なら探せば50万円前後でも入手可能でしょう。
カワサキNinja ZX-12R
最速奪還のためにZZ-R時代のエンジンと別れを告げ、完全新設計のエンジンとこれまた新機軸のモノコックフレームを手にして登場。しかし、初期型は相当な技量がないと乗りこなせないクセの強いマシンに。それもあってか中古は40万円台から狙うことができます。