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「アッシーくん」御用達の「六本木カローラ」! 狂乱のバブル時代、クルマは「ナンパの最終兵器」だった

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TEXT: 並木政孝(NAMIKI Masataka)  PHOTO: Auto Messe Web編集部

アッシーくん&メッシーくんが増殖! 売り手市場で女性たちはバブルを満喫

 閑話休題。当時、デートカーを手に入れた若者たちは週末の六本木だけでなく、トム・クルーズ主演の映画「ハスラー2」のヒットにより東京近郊(神奈川/千葉/埼玉/茨城)に続々と誕生した「プールバー」が地元のデートスポットとなった。さらに、夏休みには清里や軽井沢のペンション、冬は映画「私をスキーに連れてって」の主人公を目指して、カップルたちは苗場プリンスを目指したのである。苗場スキー場 さらに、デートカーはナンパの最終兵器として威力を発揮した。各地方にはナンパスポットが続々と生まれ、ワンレンボディコンの女子たちがクルマを駐めた列の横を、デートカーに乗った男子たちが声を掛けながら進んで行くという『ドライブスルー方式』が誕生。「声を掛けるときにはクルマから降りてはいけない」という暗黙のローカルルールまで決められていた。

 ある地方では駅のローターリーにデートカーが並び、女子たちがクルマのランク査定と顔面偏差値をチェックしてナンパの交渉を受ける『回転寿司方式』も発生。ナンパの成功率は、デートカーの女子ウケ度が大きく影響したのである。初代ソアラ 当時、女子たちの間では彼氏の乗っているクルマのランクがヒエラルキーを大きく左右し、クルマの人気度でマウント合戦が繰り広げられていたのも懐かしい話である。デートカーで送迎してくれる彼氏は「アッシー君」と呼び、便利なタクシー代わりに使っていた猛者女子も存在した。送り迎え用の彼氏はアッシー君、食事を奢ってくれる彼氏は「メッシー君」、プレゼントをくれる彼氏は「みつぐ君」と使い分けられていたのも、バブル景気に浮かれた当時の恋愛事情である。

バブルの終焉を迎えるとそれまで人気だった2ドアクーペは凋落……

 1990年代の中盤、バブル崩壊とともに「デートカー」というカテゴリーは消滅し、次々と日本市場から姿を消した。悲しいことだが当時の若者たちを熱狂させたプレリュードやシルビア、セリカという名前は過去の遺産になっている(※編集部注:ネオクラ旧車人気で中古車価格は高騰)。S13型シルビアコンバーチブル それでもわずかに生き残った希少な2ドアクーペは、使い勝手の悪い「カーマニア向けのクルマと」しての烙印を押されてしまった。バブルで踊らされたのは人だけではく、愛すべき「デートカー」なのかもしれない。

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