豊田章男社長の活動が発端だった
このようにしてトヨタのモータースポーツ活動のTGR化は図られたのですが、「そもそもGAZOOって何?」という疑問も生まれてくると思います。
GAZOOの発端は1997年にまで遡ります。中古車情報や登録した車両の車検や整備の情報などにアクセスできる、画像情報ネットワークシステムをGAZOOと呼んでいました。今でこそトヨタに関係するさまざまな場所で見かけるGAZOOですが、その始まりはコンビニのチケット販売のような筐体端末からスタートしたのです。この取り組みの発起人は、現在のトヨタ社長である豊田章男氏。
当時はこういったシステムにトヨタという名称を使うことは許されなかったため、画像を利用した情報サービス、画像=GAZOからなる造語として「GAZOO」の名称が使われることとなりました。以後、インターネットサービスを中心にGAZOOの名称を展開。2007年にニュルブルクリンク24時間耐久レースに参戦したときも、当時副社長だった豊田章男氏を中心に始まったプライベートに近い活動で、トヨタではなくGAZOOの名称が使用されました(そのときのエントリー名は豊田章男ではなくモリゾウ)。
モータースポーツ活動やカスタマイズパーツ開発を担うTRD
TGRが表舞台に出る以前、トヨタのモータースポーツ活動にはTRDの名が多く掲げられていました。TRDは「トヨタレーシングディベロップメント」の略。TRDは救急車などを手掛けるトヨタの特装車部門であるトヨタテクノクラフト(現株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)が運営している、トヨタ車のカスタマイズパーツやモータースポーツ活動を支援するブランドです。
カスタマイズパーツのみならず、トヨタのレースカー開発やモータースポーツ活動に関するパーツ提供を行っているため、TGR化が図られる前にはモータースポーツシーンでTRDのロゴを見かける機会が多くありました。 TGR化によりTRDは解散したのか? と思う人もいるかもしれませんが、そのようなことはなく、現在でもトヨタ車のカスタマイズパーツを作り続けています。また、モータースポーツ活動はTGRへと名称を変えましたが、実態はTRDの活動がそのままTGRへと名称を変更したという形に近い形となっています。
近年モータースポーツ活動や、GRシリーズなどスポーティなモデルやグレードに注力しているトヨタ。TGRはそのスポーティなブランドイメージを、わかりやすく統一するという点が主だった目的と言えます。また、その名称の発端は現社長が若き日に立ち上げたプロジェクトに由来している、という点も非常に面白いところ。これからTGRはどのように周知されていくのか楽しみです。