TGRって何? TRDとは何が違うの?
近年トヨタがモータースポーツ活動に用いている名称「TOYOTA Gazoo Racing(TGR)」。サーキットでTGRのステッカーや旗などを見かけたことがある人も多いはず。しかしトヨタ&サーキットと言えば、ひと昔前ならばTRDを連想するという人が多いのではないでしょうか? 今回はTGRの歴史を振り返りつつ、TRDとの関係性などを見ていきましょう。
そもそもTOYOTAGAZOO Racingとは何か?
前述の通り、TGRとはトヨタ・ガズー・レーシングの略。近年はトヨタのモータースポーツ活動全般にTGRの冠が掲げられています。その発足は2015年4月のこと。それ以前から各種モータースポーツ活動に力を注いでいたトヨタですが、モータースポーツ活動で使われていた名称はTOYOTA Racing、LEXUS Racing、GAZOO Racingとさまざまでした。そのような状況のなか、ブランドイメージの統一を狙って、トヨタの車両を使用してのモータースポーツ活動はTOYOTA GAZOO Racingに。レクサスブランドの車両を使用してのモータースポーツ活動は、LEXUS Racingへと統一されることとなりました。
以後、トヨタの各種モータースポーツ活動やそれらに付随する活動は、TOYOTA GAZOO Racingへと徐々に名称を統一。モータースポーツへの参加活動だけでなく、ドライバー育成プログラムのTDP(トヨタヤングドライバーズプログラム)も「TGRドライバー・チャレンジ・プログラム(TGR-DC)」へと名称を変更しています。
TRDラリーチャレンジもTGRラリーチャレンジへ名称変更するなど、トヨタのモータースポーツ活動の頂点から裾野までTGR化が図られました。
また、2020年からはレクサスLCに代わりGRスープラがSUPER GTに参戦。これにより一気に国内のモータースポーツ現場ではTGRのロゴを見る機会が増えました。
豊田章男社長の活動が発端だった
このようにしてトヨタのモータースポーツ活動のTGR化は図られたのですが、「そもそもGAZOOって何?」という疑問も生まれてくると思います。
GAZOOの発端は1997年にまで遡ります。中古車情報や登録した車両の車検や整備の情報などにアクセスできる、画像情報ネットワークシステムをGAZOOと呼んでいました。今でこそトヨタに関係するさまざまな場所で見かけるGAZOOですが、その始まりはコンビニのチケット販売のような筐体端末からスタートしたのです。この取り組みの発起人は、現在のトヨタ社長である豊田章男氏。
当時はこういったシステムにトヨタという名称を使うことは許されなかったため、画像を利用した情報サービス、画像=GAZOからなる造語として「GAZOO」の名称が使われることとなりました。以後、インターネットサービスを中心にGAZOOの名称を展開。2007年にニュルブルクリンク24時間耐久レースに参戦したときも、当時副社長だった豊田章男氏を中心に始まったプライベートに近い活動で、トヨタではなくGAZOOの名称が使用されました(そのときのエントリー名は豊田章男ではなくモリゾウ)。
モータースポーツ活動やカスタマイズパーツ開発を担うTRD
TGRが表舞台に出る以前、トヨタのモータースポーツ活動にはTRDの名が多く掲げられていました。TRDは「トヨタレーシングディベロップメント」の略。TRDは救急車などを手掛けるトヨタの特装車部門であるトヨタテクノクラフト(現株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)が運営している、トヨタ車のカスタマイズパーツやモータースポーツ活動を支援するブランドです。
カスタマイズパーツのみならず、トヨタのレースカー開発やモータースポーツ活動に関するパーツ提供を行っているため、TGR化が図られる前にはモータースポーツシーンでTRDのロゴを見かける機会が多くありました。
近年モータースポーツ活動や、GRシリーズなどスポーティなモデルやグレードに注力しているトヨタ。TGRはそのスポーティなブランドイメージを、わかりやすく統一するという点が主だった目的と言えます。また、その名称の発端は現社長が若き日に立ち上げたプロジェクトに由来している、という点も非常に面白いところ。これからTGRはどのように周知されていくのか楽しみです。