なんとなくで選んで交換は愛車の寿命を逆に縮める
エンジンオイルとは人間の血液のようなものとよく言われる。エンジンの寿命、そしてパワーなど、重要な“パーツ”のひとつなのだが、意外に知らないことも多い。今回は基礎となるポイントをしっかりと押さえつつ、最新のオイル事情も紹介する。
初出:XaCAR 86&BRZ MAGAZINE Vol.31(一部加筆)
オイル交換は愛車のためにも正しい知識が大切
今回はエンジンオイルについて見てみるが、その役割を整理すると、まず思い浮かぶのが潤滑。そのほかにも冷却や清浄、防錆などさまざまな機能がある。それゆえ、人間の血液にも例えられるのだが、交換を怠ったり性能の低いオイルを選ぶと、これらの機能が正しく得られないことになる。ここを読んでいる方はそのようなことはないと思うが、なんとなくオイルを選んで交換している人は多かったりする。愛車のためにも正しい知識が大切になってくるのだ。
押さえておきたい3つのポイント
[粘度]ますます加速する超低粘度化
オイルは乗り方などに合うものを選ぶのが鉄則。その代表格が粘度で、86&BRZの純正指定は0W-20だ。Wが付くのが低温時(40℃)で付かないのが高温時(100℃)の粘度となり、数字が大きくなると硬くなる。闇雲に硬くすると始動性や燃費、レスポンスが低下する。また、実際は同じ20でも粘度に差があるので、自分好みを探すのもいい。
[規格]最近規格はSPへと進化
粘度とともに重要なのが規格だ。Sとアルファベットを組み見合わせたもので、現在はSPが最高だ。これはAPIというアメリカの規格で、一番お馴染みのもの。API規格は数年毎に進化しているが、最近はもっぱら燃費性能やダウンサイジングターボ対応がメインなので、SN以上を選んでおけば性能的には問題ないだろう。
・ILSAC:国際潤滑油標準化認証委員会の規格で、米国自動車工業会と日本自動車工業会が共同で制定[現在の最高はGF-6]
・ACEA:欧州自動車工業会の規格で、おもにロングライフを重視[現在の最高はA5]
※ILSACについてはAPI とリンクしているので、参考程度でかまわない
[ベースオイル]性能を決める重要ポイント
オイルはベースオイルに各種添加剤を入れて作られ、その割合は半分以上ということも珍しくない。その添加剤の性能を引き出すという点でも、基本となるベースオイルは重要になる。基本的には下記の3つで、価格や性能に関係するので選ぶ際はチェックしておきたい。100%化学合成油はやはり、潤滑性や耐熱性などに優れている。
・100%化学合成油熱安定性などに優れるものの、高価
・半化学合成鉱物油と100% 化学合成油をブレンドしたもので、性能と価格のバランスがいい
じつはこの3つ以外に、最近増えているのが、VHVI と呼ばれるもの。鉱物油を高度に精製したもので、性能も100%化学合成油に近い。全合成油や化学合成油と表示しているオイルもあり、間違えやすいので注意したい。
まだある知っておきたい基本&最新事情
エンジンオイルの交換時期
オイル交換時期については諸説ある。また、安いのをこまめに変えるか、高いのを長く使うかだが、安いのは初期性能からよくないので、しっかりとした性能のものを適切な間隔で交換するのが一番だ。最近のオイルなら1万km/1年ごとでもまったく問題ないが、愛車をいたわり、安全マージンに余裕を持たせるなら5000km/半年ごとがベストだ。交換はDIYでも可能だが、入れ過ぎなどのトラブルに見舞われることもあるので、プロにまかせるのが基本。
オイルフィルターについて
オイルフィルターは不純物を取り除く重要なパーツで、交換は純正指定のオイル交換2回に1回で問題ない。安い社外品には濾紙が薄かったりするものもある。基本的には純正品を使うのがオススメ。
上抜きor下抜き、どっちがいい?
エンジンの下にあるオイルパンのドレインボルトを外して抜くのが下抜き。点検用スティックの穴から吸い出すのが上抜き。どちらがたくさん抜けるかについては、実際はイラストのように一長一短だ。そもそもエンジン内の各部には古いオイルがけっこう残ってしまうので、気にする必要はないだろう。こだわるなら下で抜いてから上からも抜く併用だろうが、定期的に交換しているならシビアになる必要はない。また上抜きだとパッキン交換が不要というメリットはある。
ギヤオイルはなにが違う?
エンジンオイルよりもギヤオイルの粘度はかなり高い。粘度表示自体はエンジンオイルと同じだが、基準が違っていて、例えば75W-90はエンジンオイルだと10W-40相当という具合だ。またグレード規格も写真のようにGL-5のように表記され、1から6まである。
添加剤は必要なのか!?
添加剤は必要か? そもそもオイルには添加剤が入っているので、そこに添加すると成分バランスが崩れてしまうなど、意見もいろいろある。オイルに使われる添加剤は複数が混ざってもひどく悪さをすることはあまりないだけに、シビアになる必要はないだろう。
フラッシングについて
フラッシング効果のある添加剤もある。清浄性能が高く、内部に溜ったスラッジなどを溶かし出してくれる。ただし、オイル交換をしっかりしていれば内部をきれいに保てるので、あえて使う必要はないだろう。
案外知らない、オイルにまつわるアレコレ
消費期限
じつはオイルはかなりもつ。かなり古くても、開けてみて水分が混ざって白くなったりしていなければ使える。ただ、海外では缶の使用が規制されていてプラボトルが使われているが、これは空気を通すので劣化するのは缶よりも早い。
混ぜちゃだめ!?
DIY交換で足りないときやオイルが減った場合、他銘柄を混ぜてはダメかと思うことがある。混ぜないに越したことはないが、混ぜてもなにかが変わるわけでもない。実際は問題はないと思っていい。粘度が違うモノを混ぜると中間になる。
スラッジ
劣化したオイルや汚れが凝縮した、泥のような汚れをスラッジという。発生の原因はエンジンの摩耗などもあるが、オイル交換を怠っていると出やすくなる。スラッジはエンジンの作動に悪さをすることがあるので、オイル交換はやはり大切だ。