名車の後継モデルは意外と難しい
現在では伝説となっているAE86型レビン&トレノの後継モデルとして、AE91&92型が1987年5月にフルモデルチェンジ。レビンと&トレノとして5代目に当たるモデルである。(91が1.5L。9.2が1.6Lですが、本稿では以後92で統一します)。 AE86型との違いは、4ドアセダンのカローラ&スプリンター同様にFFとなったこと。ノッチバックがなく2ドアクーペのみの仕様で、固定式ヘッドライトがレビン、リトラクタブルがトレノという見分け方ができた。 これは先代からの踏襲だったが、高級クーペとしてソアラ&スープラがある時代だったため、レビンが2代目ソアラ、トレノが日本の初代スープラの縮小版という見方もされていた。その理由は写真をよく見てほしいのだが、どちらも直線と曲線をうまく組み合わせたラインで構成されており、すらっとして嫌みがないというか、老若男女に好かれるデザインに仕上げられていた。 この時代はバブルの黎明期だったので、こうしたスタイリングは非常に好まれた。富裕層は免許を取っていきなりマーク2やスカイラインを所有する方も珍しくなかったが、レビン&トレノは多くの若者のファーストカーとして周囲を安心させる外観と性能だったのだ。
スーパーチャージャー搭載でライバルを一歩リード
そこでエンジンだが、まず先代との違いが出るのがスーパーチャージャー。先代86はFRに固執して結果、現代でも名車となるが、92は横置き搭載のFFになったけど走りは勝っていますと言わんばかりに空冷インタークーラーのスーパーチャージャーを装着。4A-GZE型エンジンは最高出力145ps/6400rpm、最大トルク19.0kg-m/4400rpmを発揮。スーパーチャージャーを積む「GT-Z」の重量は1070kgだから十分以上の性能を誇った。 そして86から横置きへと(実際には横置きFFは先代カローラFXと4ドア(AE82)に搭載された)変更された4A-GE型(T-VIS:可変吸気システムを追加)のGT-Vは120ps/6600rpm、14.5kg-m/5200rpmへと進化しており、性能向上を果たしている(余談ながらAE82の4A-GE型はグロス表記で130ps/15.2kg-m)。 ボディも進化しており、コンピューターによって最適部材が使われていて、曲げ剛性で先代比1.6倍。ボンネットやドアなどの走行中に力が加わらない部材には高張力鋼板が用いられていて、軽量化に貢献。現在では高張力鋼板は定番要素であり、力が関わらない部分はアルミニウム合金などが使われるが、90系のカローラ&スプリンターの時代では最先端だった。素材の進化がうかがえる。
ちなみにボディサイズは、基本は同じながらスーパーチャージャー搭載のGT-Zのみ全幅が1680mm。全幅1665mmのハイメカ・ツインカムの5A-FE型(94ps/13.1kg-m)搭載車は車両重量が980kgと非常に軽量であった。