チューニングの規制緩和で多くのモデルが登場
1990年代は国産スポーツカーの絶頂期。1995年に車検制度の規制が緩和され、チューニングの自由度が大きく広がったこともあり、サスペンションやマフラーなどを交換するユーザーが一気に増えた。
このころ流行ったのが、大口径テールパイプのマフラー。ターボ車では115φ、120φ、130φと太いものが好まれた。当時のノーマルマフラーは日常の使いやすさを優先し、低速・低負荷時のレスポンスを優先。また280ps自主規制に合わせるため、あえてマフラーのパイプを絞ってパワーを抑えていた事情もあり、マフラー交換によるパワーアップの伸びしろも大きかった。
エンジンの性能を最大限に発揮するために採用
ゆえにエンジンチューンの第一歩は、排気効率のいいマフラー=ストレート構造でメインパイプの太いマフラーへの交換だった。その抜けのいいマフラーの象徴として、テールパイプの太いマフラーを求めるユーザーが多かったのである。ただし、性能に直結するのはメインパイプの太さであって、テールパイプはメインパイプより細くなければ性能への影響はほとんどない。
そういう意味で、やたらと太いテールパイプはチューニングカーの「記号」的意味合いが強かった。あれから四半世紀も経つと流行も変わり、今ではテールパイプの太いマフラーはあまり見かける機会がない。
排気量が大きく高出力のクルマでも1本出しの大口径タイプではなく、2本出し、あるいは4本出しマフラーが主流だ。これは社外品だけでなく、純正マフラーにも言えること。
テールパイプの複数化は車両構造なども理由のひとつ
ではなぜ大口径テールのマフラーが少数派になっていってしまったのか。機能的な理由から考えると、まず各車ともショートオーバーハング化が進み、サイレンサーも縦置きより横置きが増えてきている。サイレンサーが横置きなら、出口も左右出しの方が好都合で、二本出し、四本出しが増えている理由はこれだ。また空力的な影響も大きく、ディフューザータイプのリヤバンパーは左右シンメトリーの方が都合がいい(センター出しを含む)。
エコや騒音の問題でふたたび脚光を浴びることはない?
あとはイメージの問題。最近のクルマはハイブリッド車を中心に、テールパイプが下向きのものも多い。後ろから見たとき、パッと見でマフラー出口が見えないようなクルマもあるほど。
こうした時代に、大口径のテールパイプをつけると、どうにも肩身が狭くなる。ハイパワーのチューニングカーでも、ECV(可変バルブ)付きの音量が調整できる静かなマフラーが人気なので、爆音をイメージさせる大口径のテールパイプは敬遠されがち……。バンパーを加工したくないという人も、大口径のテールパイプは避ける傾向があるだろう。