ヨーロッパではヤングタイマーが激アツ
「ヤングタイマー」とはざっくり1980年代~90年代あたりのクルマを指す言葉で、ドイツで使われ始めて世界中に広がった。クラシックカーと言うには新しいが、すでに趣味車として独特の魅力を放つようになっているクルマたちだ。
東西ヨーロッパと北欧をつなぐ文化の交差点・ラトビアでは、その名もズバリ「ヤングタイマー・ラリー」というイベントが開催されている。そこに集まるはドイツ車と旧ソ連と北欧車、それにちらほら日本車も。
遠くラトビアの地で活躍する日本車と、あまり日本では見かけない旧ソ連車をご覧いただこう。
バルト三国、それは知られざるラリーの本場
ラトビアという国について馴染みのある日本人は少ないかもしれない。世界史の知識として、エストニア、ラトビア、リトアニアの「バルト三国」が1991年にソ連から独立を果たしたことや、さらに遡ると日露戦争のときに「バルチック艦隊」がラトビアの港で集結してから遠路はるばる日本海までやってきたこと、くらいだろうか。
じつはバルト三国はラリーの盛んな土地柄で、エストニアからはマルコ・マルティン、オィット・タナックといったWRCドライバーを輩出している。ラトビアでもヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)が開催されているし、人口200万人の国としてはカークラブの数が非常に多い。
そんなラトビアで「ヤングタイマー・ラリー」というイベントが2012年から開催され、今ではヒルクライムレースやサーキットレースも含めて、多いときには年に5回も走行イベントが行われているのだ。
エントリー資格は1970年代~90年代までに製造されたクルマとやや広めの設定。エントリーフィーわずか50ユーロと気軽に参加しやすく、現地と周辺諸国のヤングタイマー愛好家たちが集まって盛り上がっている。
昼のスプリントと夜間ラリーの2本立てイベント
2021年シーズンを締めくくるイベントとして10月9日に開催された「ヤングタイマー・ラリー・スポーツデイ2021」の会場は、首都リガの郊外にあるビケルニエキ・サーキット。ここは舗装路とダートコースを兼ね備え、世界ラリークロス選手権も行われている場所だ。
この日は2本立ての構成で、日中にサーキットでのスプリントレースを行い、夕方からはサーキットとラリークロスのコースを組み合わせた約40kmの夜間ラリーを行った。
日本でおなじみのクルマも現地では超マニアカー
ヤングタイマー・ラリーの最大勢力はVW、BMWを中心としたドイツ軍団。次に旧ソ連勢、北欧勢と続くが、少数ながら日本のヤングタイマー車の姿もある。わが国でも道で見かける機会は少なくなってきた面々で、はるかラトビアで乗っているオーナーは、かなり筋金入りのマニアといえる。
1991年式のホンダCR-Xと同年式のシビックシャトルは、ホンダ党で連れだって参加。
ソ連のクルマを見られるのは旧共産圏の醍醐味!
今ではロシアのワズ(UAZ)・ハンターや、ラーダ・ニーヴァといったクルマが日本にも少数ながら輸入されていてアウトドア志向のオーナーに支持されている。だが、ソ連が健在だった時代の大衆車はさすがに、日本で見る機会はほぼない。
旧ソ連に長らく属していたラトビアには、当然そんな旧車も多数生息している。この日のイベントでも異彩を放っていたのがVAZ(ヴァース、「ヴォルガ自動車工場」の略)の3台だ。
冷戦時代、提携していたフィアットの124をベースにして1970年に発売された「VAZ 2101」は、それ以降ソ連内で独自の進化をして2102、2103、2104……と世代を重ねていった。このシリーズはソ連では「ジグリ」の名で親しまれ、西側におけるフォルクスワーゲンのような位置づけの国民車だった。
ジグリはコスパに優れたクルマとして、西側諸国にも「ラーダ」というブランド名で輸出されていた。それゆえ現在もアフトヴァース(AvtoVAZ)がラーダ・ブランドでクルマを製造販売しているわけだ。
ゼッケンナンバー4はVAZ 2106。ジグリシリーズに1600ccエンジンを搭載して1976年に追加されたモデルで、この個体は最初期の1976年式。ルーフにはラトビアの国旗をはためかせている。
ほかにも、オペル・アスコナやサーブ96、VWサンタナなど、ヨーロッパのイベントならではのヤングタイマー車の雄姿を画像ギャラリーにてご覧いただきたい。
日本でも近年、ヒストリックカーの走行イベントが定着してきた。次なるステップとして、ヤングタイマーに絞ったイベントも活性化すると、さらに面白くなるのではないだろうか。