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右半身不随でも諦めない! 独自の「運転補助装置」を開発し「356ロードスター」に返り咲いた男

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TEXT: Auto Messe Web編集部 竹内耕太  PHOTO: 奥村純一

好きなクルマで毎朝ドライブできる幸せ

 雨の日以外は毎日、寝起きの早朝に45分くらいドライブを楽しんでいる小島さん。ひとりでの行動ゆえ、途中でトイレに行くのは大変だからという理由だ。

 「毎日クルマ乗らないと病気になっちゃいます(笑)。356に乗ってるとやる気が湧いてくるんですよ。雨の日は運転を控えてるのですが、憂鬱ですね」

 電動車いすから356ロードスターに乗り込むには8~10分かかる。左手と左足だけで体を運転席に入れるのは、想像を絶するほどの体力を使う。クルマに乗ったら、少しだけ前進させてからドアを閉める。車いすは帰ってきて駐車するときの目印にもなる。

 356ロードスターに乗っているときの小島さんは笑顔に満ちていて、本当に楽しそうに運転する。じつは自動車教習所の教官をしていた経歴もあり、運転はスムースなだけでなく、安全面でもきわめて模範的だ。

 運転時の動画も撮影したのでご覧いただこう。

 遠くに出かけるときは、ご友人やヘルパーさんに同伴してもらい、折り畳み式の車いすをリヤのラックに固定するそうだ。最近はクルマのイベントでもスタッフの人が身体障がい者に配慮してくれることも多い。

 ただし出かけ先の駐車場で「車いすマーク」のスペースなどに停めていると、まさかこんな趣味全開のクラシックカーに重度障がい者が乗っているとは誰も思わないため、誤解を招く場面もしばしばあったそう。そのため、「重度障がい者が運転しています。ご理解ください」と大きく書いたカードは必需品だそうだ。

 また、エンジンをリヤに搭載するRR車ゆえ燃料タンクはフロントフード内にある。ガソリンスタンドで口頭ではボンネットの閉め方を伝えにくいため、あらかじめ注意書きとメッセージを入れているのは小島さんの心配り。

 クルマから降りる方が、乗るときよりも大変だという。シートの着座面がサイドシルより低く位置しているため、一度、体を持ち上げる動きが必要になるからだ。自作の発泡スチロール製の降車用パッドを車載している。

 動かない右足を左手の力で引っぱり出しながら、少しずつ体勢を変えていき、下半身を車外に持ち出す。

 クルマのサイドに腰かけた状態から、車いすに左手と左足だけで座るまでも、かなりの体力を要する。降車には合計で10~15分かかるそうだ。

よりスムースで安全な運転を目指して今も現在進行形

 早朝のドライブが習慣、とひと口に言っても、毎回がハードな運動だ。それでも小島さんにとって、このカーライフこそがこれまでの想像を絶するような地獄のリハビリの原動力であり目標であったし、これからも日々の活力の中心であることは揺るがない。

 「夢のようです。毎朝356でドライブしてきて、こんなに幸せな思いをしていいのかなって思っちゃいます。と言っても、まだゴールではなく進行形です。もっと速やかな乗降、もっと思いのままに安全に運転できるようにしていきたいです」

 クルマ好きでもほとんどの人が諦めてしまいそうな逆境におちいってもなお、ふたたびクラシックカーに乗るために、ポジティブにリハビリと工夫を積み重ねて夢を実現した。「普通のことが普通に体験できることが幸せです」とさりげなく語ってくれたが、誰もが真似できることではない。だがまた、諦めなければ、こんなことも可能なのだと教えてくれる。

 思いがけない病気や事故、あるいは高齢による身体の弱体化など、身体が不自由になっても、好きなクルマに乗れる可能性はある。今、運転補助装置のマーケットは徐々に発展し続けていて、選択肢も広がってきている。

 小島さんが自分専用の運転補助装置として作り出した「小島式アクセルアシスト装置」も、似たような境遇の人にとってのソリューションとなることだろう。このリポートが多少なりとも参考になれば幸いだ。

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