ホンダ50周年を記念した硬派オープンスポーツ
1999年に発売され、2009年に生産を終了したホンダS2000。発表時ホンダが「リアルオープンスポーツ」と表現したこのモデルは、オープンカーながら硬派なモデルでした。2021年現在中古相場が高騰しているS2000ですが、このモデルの特異性を中心に、どんなモデルだったのか振り返ってみましょう。
東京モーターショーで出展された「SSM」
S2000の起源は1995年の東京モーターショーで発表された、SSMという2シーターオープンのコンセプトカーにあります。
この時代に発表されたオープンコンセプトカーとなると、ユーノスロードスターのヒットに端を発したオープンカーブームに乗っかった、軟派なモデルという印象があるかもしれません。しかしSSMの詳細スペックを見ると、ホンダの本気を感じさせます。
当時ホンダにラインアップがなかったFRレイアウトを採用し、縦置きされた2L直列5気筒エンジンは200psでリッター100psという高性能を実現。重量バランスは前後50:50となっていて、単なる流行りに乗って作っただけではないことがわかるパッケージとなっていました。そのSSMの発表から3年後、ホンダ創立50周年となる1998年に、市販プロトタイプとなるS2000がお披露目されました。
何もかも異例づくしのパッケージ
1999年に販売が開始されたS2000は「350万円の量産車」という観点から見るとありとあらゆる部分が異例と言えるモデルでした。 まずもっとも驚かされるのは基本メカニズムが車種専用であること。量産車というのは基本的にはコスト削減のため、エンジンやトランスミッション、クルマの土台となるプラットホームが同メーカーの他の車種とある程度共通化されます。
しかし、先述したようにホンダにはFRレイアウトの市販車がありませんでした。そのためすべての基本メカニズムが、S2000のために新たに設計されているのです。数千万円クラスとなるスーパースポーツであるならば、1車種だけのために専用開発するということはあり得る話ですが、この価格帯の1車種のためだけに専用開発することは、クルマ造りの常識から言えば信じられないことと言えます。
次にエンジン。2L直4エンジン市販モデルでは2L直4エンジンの「F20C」を搭載。最高出力は自然吸気ながら250psを発生。 リッター当たり125psという性能は、自然吸気エンジンとして当時はもちろん現在でも世界トップレベルの高性能です。このエンジンはスペックだけでなく、その特性にも驚かされます。レブリミットはなんと9000rpm、最高出力発生回転数は8300rpm、最大トルク発生回転数は7500rpmというレーシングエンジン並みの超高回転型ユニットなのです。
そして走りの性能の土台となるボディ。フロアトンネルをメインフレームの一部として活用し、フロアトンネルを前後のサイドメンバーと同じ高さで水平につなぐX字型の構造を採用。「ハイX(エックス)ボーンフレーム」と名付けられたこの構造により、オープンカーでありながらクローズドボディ以上の剛性を実現しているのです。