カッコいいデザインは憧れの存在だった
クルマの顔とも言うべきがフロントまわり。精悍だったり、ファニーだったりと、キャラクターや印象を決める重要なポイントだ。さらにその中心にあるのが、エンブレムである。日本車の場合、車種別に設定されることが多く、例えばクラウンなら王冠をモチーフにしていたり、スカイラインは頭文字のSをうまくアレンジしたものだったりと、デザイナーが腕を奮った、逸品と言えるデザインや作りとなるものが多い。
車種の代名詞ともいえるマークもなくなっている……
この車種別エンブレムが最近、減ってきている。例えばハリアーだ。ハリアーといえば、初代から専用エンブレムはかなり象徴的。車名の由来である「チュウヒ」と呼ばれるタカの一種をモチーフにしたものが、フロントに付けられていてアイデンティティでもあった。ハリアーの特徴といえば、フロントのエンブレムが思い浮かぶ方も多いのではないだろうか。
それが現行型ではトヨタのコーポレートマークへと変更されていて、登場時には「なぜやめてしまったのか!?」と、批判的な意見もあったほど。実際に見てみるとダメというわけではないが、今までの伝統が途絶えた気がして、少々寂しい気がするのは確かだ。開発陣やデザイナーのなかでもかなり熱い議論が戦わされたようだが、結局、押し切られる形でトヨタのマークになったという。
一方で、最近出たばかりのカローラクロスのフロントには、現代流にアレンジされているが、Cをモチーフにしたエンブレムが付いている。こちらも関係者に聞いたところでは、コーポレートマークにするという意見もあったそう。しかし、さすがにカローラというビッグネームだけに、車種別エンブレムになったという。ただし、海外仕様はトヨタマークとなる。
欧米ブランドは元からコーポレートマークが主流
いずれにしても、流れとしては次第にコーポレートマークに移行していると言ってよく、ハリアーでもそうだったようだが、グローバル化が大きな理由のようだ。実際、車種別エンブレムを積極的に採用していたのは日本車ぐらいのもので、欧米のメーカーを見ても、メーカーやブランドのエンブレムを付けていることがほとんどではある。ジャーマン3はもとより、フランス、イタリア、アメリカでもシボレーのボウタイなど、枚挙に暇がない。
日本車もそこに寄せているだけと言えばそれまでだし、ブランドイメージの統一化というのもあるのだろうが、少々寂しい気がする。また、最近はグレードのエンブレムもシンプル化している。以前のステッカーからまた、メッキがかかった別体のものが増えているが、リヤに付いているだけというのが普通だ。サイドにはせいぜいハイブリッドといったエコ系のバッジが付くことがある程度。
その昔であれば、GTの文字が誇らしげに付いていたり、車名もフェンダーに付いていたりと豪華だった。こちらは流麗さを重視するボディのデザインとマッチしないというのが理由だったりするが、フロントのエンブレム同様に減っているのは寂しい気がする。流行は繰り返すというが、また、装着しているクルマが当たり前の時代は来るのだろうか!?