本来の性能を引き出すためになくてはならない存在
もはやターボ車の必需品。インタークーラーがないとターボの能力をフルに発揮することは難しいだろう。ターボの実力は周辺パーツのサポートがあってこそ引き出せる。その最たるものがインタークーラーというわけだ。
インタークーラーってそもそも何?
インタークーラーとは?
インタークーラーは吸入空気を冷やすためのパーツだ。過給器付きのエンジンにあって、NAエンジンには使われてはいない。
エンジンはパワーを引き出すために、より多くの空気を燃焼室に取り込まなければならない。吸入空気を取り込む原理は、負圧になった燃焼室と大気中にあった吸入空気の圧力差を使っている。空気は圧力の低いところへと流れていく法則だ。しかし、燃焼室に排気ガスが少しでも残っていると圧力が上がり、吸入空気との圧力差が減って取り込みにくくなってしまう。これがNAエンジンの弱点だ。
ターボは吸入空気を過給することで圧力を上げて燃焼室内との圧力差を広げている。こうすることで効率よく空気を流し込んでいける。これなら多少、排気ガスが残っていたとしても、吸入通路に若干抵抗があったとしても勢いよく取り込める。これがターボのメリットだ。
しかし、気になることもある。空気を過給して圧力を高めていくと、温度も上がっていってしまうことだ。温度が上がると空気の体積が膨張し、分子間の距離が広がってしまう。つまり、空気が増えてもパワーに必要な成分が少ない状態に陥る。
そこでインタークーラーを使って冷やすことで、密度が濃くパワーに結びつく空気にしていくというわけだ。
インタークーラーとターボエンジンの関係性
インタークーラーはサージタンクの手前に設けられている。エアクリーナーを経てターボで過給され温度が高まった空気を取り込み、冷やしてからエンジンへと導く。
過給した吸気温度は季節などによって変化するが、0.4kg/cm2ぐらいの過給圧でも80度から100度ぐらいに達してしまう。1.0kg/cm2なんてかけようものなら、簡単に100度は飛び越える。外気温度は猛暑だとしても40度は滅多に上まわらない。そう考えると、過給後の温度上昇はかなりのものだ。
吸気温度が上がれば異常燃焼であるノッキングを誘発させる。ノッキングが発生したら収まるまで点火時期を遅らせなければならない。そうなるとパワーアップどころではなく、パワーはダウンしてしまう。うまくノッキングが収まらなければ、エンジンブローだって起こりうる。ターボ車は異常燃焼が起こりにくいハイオクガソリンを推奨しているのはこのためだ。
インタークーラーはハイオクと同様にノッキングを発生させないようにして、パワーアップできるよう吸入空気を冷やして対応している。
過給されて高まった吸気温度を、できるだけ外気温度に近づけるようにしているインタークーラー。だがターボをサイズアップしたり、高い過給圧に設定すると、夏場なら60度から70度あたりに落とすのがやっとだというが現状だ。
インタークーラーは大きく分けて二種類
空冷式インタークーラー
インタークーラーは冷却方法の違いで空冷式と水冷式に分かれる。一般的なタイプは空冷式だ。ターボで加圧して温度が上がった空気を、インタークーラーのコアというフィンとチューブで構成された、箱のような形状の部分に取り込んで冷却する。構造は至ってシンプルで、インタークーラー本体のトラブルはほとんど起こらない。
要であるコアは走行風が当たる場所まで持っていかなければならず、配管がどうしても長くなってしまう。長くなれば曲がる部分も増えてきて、空気の流れの抵抗を引き起こす。こうなるとせっかく過給した空気の圧力損失が発生してしまう。さらに、レスポンスの低下も招くことになる。空冷式はこれらの発生を極力抑えるようにレイアウトを工夫している。
水冷式インタークーラー
いっぽう水冷式は水を冷媒にしているので、吸入空気を走行風に当てる必要がなく配管を短くできる。絶対的な冷却性能は空冷式にはおよばないものの、安定して冷却できるためレスポンスが良くなる。しかし構造は複雑だ。水を循環させるためのポンプや、その水を冷やすためのラジエーターが必要になる。必然的にコストが上がり、トラブルの発生も増えてしまう。
インタークーラーはメンテナンスが必要
汚れることによるデメリット
インタークーラーのポテンシャルをフルに発揮させるためには、冷却している部分、つまり空冷式ならばインタークーラー本体のコア、水冷式ならばラジエーターにゴミなどが付着していないかを頻繁に確認するべきだ。どちらも走行風が当たる部分に設置されているので、外部からの異物の影響を受けやすい。落ち葉が舞い散る季節は要注意だ。それらを取り除くことで冷却効果は大きく変わる。
掃除やメンテナンスの目安は?
とくに空冷式の場合はコアに設けられたフィンが大きめなので、飛び石などによる変形が起こりやすいことも覚えておこう。フィンに走行風が当たって熱を奪う仕組みなので、それが曲がってしまえば風が抜けにくく、通過できずに滞ってしまい冷却に支障をきたす。フィンは薄い金属でできているので、比較的簡単に修復できる。
曲がったフィンを起こすことを専門用語で「目立て」という。マイナスドライバーでこじればフィンが元に戻りそうだが、うまくはいかない。どうしてもテコの原理を使うことになり、他の部分にも力が掛かって、今度はそこが曲がってしまうことになるからだ。
オススメのツールは切手用のピンセット。フィンの曲がった部分をしっかりと挟み込んで動かなくなってから修正していく。プロの場合はラジオペンチを使っている。もちろんそのままでは先端が厚すぎるので、薄く加工するのだ。ピンセットよりも大きな力が使えるので、修復の精度もスピードも上がる。どんなツールでも先端の幅がある程度広いほうが、力は分散されて失敗が少なくなるという。これは散々失敗したプロからのアドバイスだ。
交換などはどのくらいのタイミングですれば良い?
インタークーラーのパイピングにはゴムホースが使われていて、その固定用のバンドの増し締めは定期的に行ったほうが良い。ハードに走ったあとにチェックすると抜けかけている場合が非常に多い。当然抜けてしまえばまともには走れない。サーキットでの走行会前の確認は必須だ。走り方で緩む度合いは大きく変わるので、季節の変わり目など、自分で決めたサイクルに合わせてチェックしよう。
注意点としてはゴムホースが劣化してしまったら、いくら増し締めしても効果がないということ。バンドを締めていって手応えが感じなかったら劣化の証。そのような場合はバンドを緩めて外してみよう。バンドが巻かれていた部分だけがめり込んで元に戻ってこないはずだ。これではホースの柔軟性がなくなっており、本来の機能が活かせてない。こうなると交換するしかない。バンドの増し締め時にはホースを潰すように掴んで、柔軟性があるかどうかも確認。掴み心地がいつもと違って硬い感触ならば交換時期に入ったということだ。
インタークーラーのお掃除やメンテナンス方法
走行距離の多いクルマの場合は、ブローバイガスの影響に目を向ける必要がある。長年エンジンを酷使しているとブローバイガスの発生が増えるのだ。インタークーラーの入り口側のホースを外してみる。内側にオイルのような液体が付着していたら、ブローバイガスにほぼ間違いない。これはパーツクリーナーで洗い流せば綺麗になる。
問題はインタークーラーの内部だ。ホースに付着していた量にもよるが、ブローバイガスはその先のインタークーラーにも影響を及ぼしているはずだ。しかしインタークーラーはホースのように簡単に取り外したりはできない。気になる場合はプロに頼んで点検してもらえば安心だ。
チューニングしてインタークーラーをワンオフで付ける場合は、パイプの継ぎ目の場所を工夫するとパイプ抜けは起こりにくくなる。ターボはエンジンにセットされているため、トルク変動でクランクシャフトの回転と同じ方向に円を描くように動く。いっぽうインタークーラーはクルマ側にセットされているので、ターボとは動きが異なる。そんな動きの違いを考えてトルク変動が大きくなっても、影響を受けない方向に継ぎ目を設ければトラブルの少ないレイアウトが実現できる。さらに継ぎ目はパイプの曲がっている部分ではなく、直線部分にすればバンドが締めやすく、より抜けづらくなる。
まとめ
より大きな効果を得ようとしてインタークーラーをサイズアップしても、適正でないとレスポンスが悪化するだけでメリットは得られない。純正ターボを使うのか、ターボを交換するのかで適正サイズは変わってくる。インタークーラーは大は小を兼ねないのである。