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幻の「カウンタックLP500」が「復刻」! 2万5000時間かけて行われた「執念の再製作」の舞台裏

ランボルギーニのヒストリック部門がカウンタック LP500を完璧に再現

 以前、トヨタのMR-Sをベースとしたランボルギーニ・カウンタック LP500レプリカを愛用しているシンジさんの記事を掲載した。今度は、なんと、本家のアウトモビリ・ランボルギーニがLP500の再製作プロジェクトを完遂したという。 去る10月1日からイタリアのコモ湖で開催された、コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラデステのコンセプトカー・クラスに出品したというニュースが飛び込んできたのだ。

市販に向けたテストカーはクラッシュテストに使用されて消失

 カウンタック LP500といえば、その斬新なエクステリアデザインをベルトーネ在籍時のマルチェロ・ガンディーニが担当。1971年のジュネーブ・モーターショーにおいて、ランボルギーニのブースではなくカロッツェリア・ベルトーネのブースに展示されたイエローのLP500(デザイン・コンセプトだった)は、その後、市販に向けたテストカーとして使われ、最期はクラッシュテストに使用されて残念ながら消失したことで知られている。 今年はLP500が登場してからちょうど半世紀。生産台数112台の限定モデルとして今夏にリリースされたカウンタック LPI800-4がカウンタックのデビュー50周年を飾るに相応しいモデルだな……などと素直に思い、喜んでいたが、強烈な真打が控えていたのだ。 今回、カウンタック LP500を完璧に再現したのは、ランボルギーニのヒストリック部門として2015年に発足し、同社の歴史的アイデンティティを維持する責任を負っているポロストリコ(Polo Storico)である。

市場で入手できなくなったスペアパーツの製造を行うポロストリコ

 おもな職務のなかには、2001年までに生産されたすべてのランボルギーニ車の認証と修復も含まれている。この目的のために、ポロストリコはアーカイブを構成している新旧ソースの保存と取得を監督。すべてのヒストリック・ランボルギーニの価値を確立し、保存することを可能としているのだ。古典的なランボルギーニ愛好家からの要求により、市場で入手できなくなったスペアパーツの製造にも注力している。 そのような本気のセクションが動いたことで、カウンタック LP500が再製作されたわけだが、驚くべきことに2万5000時間以上という膨大な作業時間が必要だったという。ランボルギーニのデザイン部門であるチェントロスティーレも、ボディワークの再構築とスタイリングの監修において多大な貢献を果たした。 アウトモビリ・ランボルギーニの会長兼CEOであるステファン・ヴィンケルマンは、カウンタック LP500の再製作プロジェクトについて次のようにコメントした。

「カウンタックは、高性能車の世界に新たな息吹をもたらした存在です。このモデルの誕生50周年を祝う記念すべき2021年に、再製作したLP500をコンコルソ・デレガンツァ・ヴィラデステで賞賛できることは特別な出来事です」

 そもそも、何故にカウンタック LP500の再製作プロジェクトが始動したのか? どのように再製作されたのか? ということについてもアウトモビリ・ランボルギーニの公式なアナウンスメントがあるので記していこう。

ディテールと機能を可能な限り正確に再現

 2017年の終わりにクラシックカーの愛好家で、ランボルギーニの重要な顧客がポロストリコに「当時の写真でしか知られていない伝説的なモデルである、カウンタック LP500を再製作する可能性があるかどうか」を尋ねた。

 この問い合わせがあってからの最初の数カ月は、カウンタック LP500に関する入手可能なすべての資料を集め、詳細な分析を行うことに費やされた。「資料と文書の収集は非常に重要だった」と、サービス責任者兼ポロストリコのジュリアーノ・カッサターロ氏は語っている。 カウンタック LP500の細部、全体的な一貫性、技術仕様を知ることに注力し、写真、文書、会議報告書、原画、そして、当時の思い出といったすべてのことが、ディテールと機能を可能な限り正確に再現することに貢献したのだという。また、オリジナルのLP500に装着されていたタイヤを再現するため、Fondazione Pirelli(ピレリ財団)から歴史的なアーカイブ資料が提供されたことも大きかった。

ボディワークは往時と同じ手順で行われ製作

 再製作に向けての実際の作業は、プラットフォームシャーシを造ることから始まったが、これは、その後の市販版カウンタックの管状フレームとは完全に異なるものである。ポロストリコは、物理的に再設計するだけでなく、当時の製造方法を尊重するために、どの作業システムを採用して構築するかを決定する必要があった。

 そこでボディワークは往時と同じ手順で行われ、その分析と定義にはさまざまな最新技術機器が活用された。鈑金の工程では、イタリアの伝統的な鈑金技術である「バティラストラ(battilastra)」によって作業。

 1971年に登場したプロトタイプが装備していた、照明付きの診断機器を含むインテリアについても同様のプロセスを実行。往時のコックピットが完全再現された。機械部品についてはランボルギーニのスペアパーツまたは復元されたコンポーネントを使用し、不具合があった場合、該当するパーツは完全に再構築されている。 カウンタック LP500のオリジナルデザインの歴史的再構築の重要な部分として、ポロストリコは既述したようにランボルギーニのチェントロスティーレに目を向けた。そこでは、デザイン責任者のミィティア・ボルケルト氏が率いるチームが非常にやりがいのあるプロジェクトに取り組み始めた。

「LP500は、カウンタックのあとに続いたすべてのモデルのデザインDNAを生み出したため、ランボルギーニにとってもっとも重要なモデル」とは、ミィティア・ボルケルト氏の言葉。1971年のジュネーブで発表されたクルマを再現するために、まず、1/1スケールのスタイリングモデルが製作された。

最終モデルに辿り着くまでにトータルで2500時間を費やした

 クルマ自体とともに時間の経過によってさまざまなモノが失われたが、写真による広範な証拠は残っていた。往時の出版物のチェックから始め、ホモロゲーションシートの画像やポロストリコが回収したそのほかの資料から、最初の1/1スケールモデルを作成するために必要な数学が再構築されたのだ。 最大の課題は、クルマの正確なボリュームを作成することだった。このために、膨大な情報源であるLP400(シャーシ:001)の3Dスキャンが行われた。最終モデルに辿り着くまでに、トータルで2000時間の作業を必要とし、満足のいくボディラインが完成した。インテリアについても、まったく同じ手順に従って再現されている。

デビュー当時に装着していたCinturatoCN12タイヤを使用

 デザイン・コンセプトであった往時のLP500に装着されていたタイヤを再構築するため、ピレリとのコラボレーションが非常に重要であることも証明された。じつはランボルギーニとピレリのコラボレーションは1963年から続いている。

 今回の再製作プロジェクトでは、ピレリ財団のアーカイブに保存されている画像と資料のおかげで、LP500が1971年のジュネーブ・ショーでのデビュー当時に装着していたCinturatoCN12タイヤのオリジナル図面を使用することができた。 これらのドキュメントから、ピレリの技術者は、ピレリ・コレツィオーネ・シリーズのCinturatoCN12タイヤの作製に着手。このタイヤは、1930年から2000年の間に製造されたもっとも象徴的なタイヤのひとつで、ヴィンテージのイメージと現代の技術が融合したものだ。 再製作されたランボルギーニ・カウンタック LP500用のピレリCinturatoCN12タイヤは、フロントが245/60R14、リヤが265/60R14サイズ。1970年代と同じトレッドパターンと美観を備えつつ、モダンなコンパウンドと構造を採用している。

シェイクダウンはピレリのテストコースで行われた

 ボディカラーの選択に関しては、世界トップレベルの自動車補修塗料メーカーであるPPGのアーカイブが重要であることが判明。慎重に分析後、「Giallo Fly Speciale」と呼ばれる黄色を生成するための正確な組成を識別することができた。

 再製作されたカウンタック LP500は、1971年にもたらされたエモーションと同じものを、現車のオーナーであるランボルギーニ・コレクターに与えた。シェイクダウンは、ピレリから提供されたヴィッツォーラ・ティチーノ サーキット(ピレリのテストコース)にて行っている。ここは、コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラデステで正式に発表される前に、新生LP500が最終試乗を行ったのと同じ場所だ。 このシェイクダウンにより、LP500は新しい所有者だけでなく、ポロストリコと協力してファイルとドキュメントから歴史的なカウンタックを再現するという信じられない偉業を成し遂げ、数え切れないほどの時間を費やしたサプライヤーからも感動と賞賛を得ることができたという。

「テストとシェイクダウンにより、ゴージャスであること以外にカウンタックが完全に機能していることが確認された。私たちはクライアントと一緒に車両の完成を祝い、その実現に何時間も費やしたすべての人々と信じられないほどの感情を共有することが重要だと考えた」と、ジュリアーノ・カッサターロ氏は述べている。 再製作されたカウンタック LP500は、11月15日までサンタガタボロネーゼのMUDETECミュージアムに展示されており、実車を見ることができるという。ぜひとも、日本でも拝見してみたいものだ。

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