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「ホンダ・アヴァンシア」って覚えていますか? 意欲作だったのに見事に「空振り」した上級ワゴン

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TEXT: 佐藤幹郎  PHOTO: 本田技研工業

販売は堅調にスタートするもその後苦戦で一代限りで絶版

 こうして新ジャンルを切り開こうとしたアヴァンシア。ホンダらしさを感じさせるルックスと上質なインテリア、広い室内空間によって、大柄なボディながら取り回しの良さとバランスに優れた走りで大人気になるはずだった。メディアの評価は非常に高かったのだが、月間目標台数は3000台と控えめで大ヒットとはならなかったものの、堅調に販売台数を伸ばしていた。

 発売から半年後の2000年2月にはV6仕様にも4WDを追加し、同年9月にはプレミアム・サウンドシステムやボディ同色グリル、本革巻きステアリングホイールを標準装備した特別仕様車「フリーウェイ」を設定。2001年9月のマイナーチェンジでは車高を15mm下げてストラット・タワーバーやパフォーマンス・ロッドを追加して、走りや空力を高めた「ヌーベルバーグ」を追加した。アヴァンシア ヌーベルバーグ

 後席用液晶モニターやエアロパーツ、木目調パネルの採用拡大などが図られ、商品力が一段と向上。だが月間目標台数は800台と空振りに。2003年には装備を充実させながらも価格を値下げした「プライベート・スタイル」を設定するも、アヴァンシアはこの一代限りで終了となる。アヴァンシア プライベートスタイル

コンセプトは間違ってなかったが時代を先取りし過ぎた!? 

 冒頭でも触れたが、このアヴァンシアはスタイリングだけを見ていくと、かつてのアコード・エアロデッキの進化型と感じさせるホンダらしさが詰まっていた。インテリアを見れば、本木目を使ったインスパイアなどからは後退しているとも見られるが、木目調パネルのあしらいも良く、合成皮革カブロン+ファブリックのシートは上質感があるものを採用。アコード・エアロデッキ(リヤスタイル)

 センターウォークスルーや後席リクライニング機構などの使い勝手にも優れ、静粛性を高めた室内は上質であり、最高出力を追わずに実用性重視のエンジンはキャラクターにあっていて走りの質も申し分なかった。 アヴァンシア ヌーベルバーグ

 最低地上高を高めた「L-4」や、低重心ローダウン・サスペンションの「ヌーベルバーグ」はスポーティかつエレガンスで先進性が満載。あと少しだけ時代が違っていれば、現在もアヴァンシアというモデルが売られていたに違いない。アヴァンシアはそれほど意欲的で先進的なモデルであった。

ミニバンブームが確立され人気はワゴンからミニバンへ

 ただ時代はオデッセイやステップワゴンが売れていて、2000年10月に初代ストリームが販売開始。ミニバンブームがひと段落しそうな時代に、ホンダは5ナンバーサイズのヒンジドア仕様のプチミニバン「ストリーム」で新時代を切り開いた。アヴァンシア(リヤスタイル) その流れは現在のホンダ・フリードとトヨタ・シエンタにつながるわけだが、それはまた別の話。新しきコンセプトや走行性能、優れた商品力であっても時代の流れや流行りに乗り損なうと『名車だったのに……』となってしまう。

 自動車ビジネスの難しさを物語る代表格の1台が、ホンダ・アヴァンシアだったと言っても過言ではないだろう。

■ホンダ・アヴァンシア L(TA1型)主要諸元

◯全長×全幅×全高=4700mm×1790mm×1500mm

◯ホイールベース=2765mm

◯トレッド 前/後:1555mm/1540mm

◯車両重量:1500kg

◯乗車定員:5名

◯最小回転半径:5.6m

◯室内長×室内幅×室内高:2055mm×1480mm×1215mm

◯エンジン:F23A型SOHC直列4気筒16バルブ

◯総排気量:2253cc

◯最高出力:150ps/5800rpm

◯最大トルク 21.0kg-m/4800rpm

◯ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク

◯サスペンション 前後:ダブルウィッシュボーン式

◯タイヤサイズ  前後:195/65R15

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