1992年式ケータハム・スーパーセブンBDR
雨が上がったころ会場に現れたのは、地元に住む出口さんの「スーパーセブン」だ。屋根もなければ窓もドアもない。「走る」ために必要最小限なものしかないかわりに、車両重量が約500kgと超軽量で、痛快きわまる走りを楽しめる「ライトウエイト・スポーツカー」の傑作シリーズだ。
「今までいろんなクルマに乗ってきましたが、1年前に友だちから譲り受けたこれを“あがり”のクルマと決めています。ほかのクルマとはもはや速さのカテゴリーが違いますね。気を抜くと言うことをきいてくれないので、それなりのテンションで走らないといけません(笑)」
コスワースが開発した1.6L DOHC 16バルブのコスワースBDRエンジンは150ps。パワーウエイトレシオで言えば、車重1tのクルマの300psに匹敵する。燃料供給をキャブレターからインジェクションに変え、ダイレクトイグニッションはダイハツ製に。フルコン制御で、フレキシブルに乗りやすい仕様にしているそうだ。
1979年式MGミジェット(オバフェン化)
「MGミジェット」は1961年に生まれた「ライトウェイト・スポーツカー」。埼玉県のGBさんは最終型である1979年式で走ってきたのだが、なんと迫力たっぷりのオーバーフェンダーにカスタムしていて度肝を抜かれてしまった。
聞けば、5年前に不動車だった状態で手に入れて、トヨタの「パブリカ・スターレット(KP47)」のワークスマシンのフェンダーを移植したのだそうだ。
「“ナローポルシェ”など乗ってきたのですが、ミジェットを全バラしてレストアし、直していくうちに深みにハマっていきました。軽くてクイックな走りが楽しいですよ」
1949年式ラゴンダ・ドロップヘッド・クーペ
最後はきわめて貴重なヒストリックカーをご紹介しよう。「ラゴンダ」というイギリスの老舗高級車メーカーは、1940年代末に「アストンマーティン」に吸収されているのだが、清野さんの「ドロップヘッドクーペ」(オープンカーの呼び方のひとつ)は1948~52年に118台だけ生産されたモデル。現存しているのは世界で10台に満たない。
そしてこの1949年式は、かつてイギリス王室が所有していて、今春に亡くなられたエディンバラ公が運転していた個体なのだ。
「このラゴンダが売りに出たときは買い手に厳しい審査があって、イギリスまで渡って面接までしました。買いたいと手をあげた人は何人もいたのですが、私が譲ってもらうことになったんです」
王室時代は目立つレッドで塗装されていたボディを元々のオリジナルカラーで塗り直し、長距離を走るヒストリックカーの公道ラリー「ラ・フェスタ・ミッレミリア」に2回参加して、ともに完走を果たしている。
流麗なデザインもさることながら、イギリスの自動車史に輝くエンジニア、ウォルター・O・ベントレー氏が生涯最後に手掛けた、2.6Lの直列6気筒DOHCエンジンが完調で動いているだけでも素晴らしい。なおこれは「アストンマーティンDB2」にも搭載されている。クルマの歴史の生き証人のようなクルマである。
ここまで、気合の入ったイギリス車オーナーとクルマばかり紹介してきたが、「浅間サンデーミーティング」は至ってカジュアルなクルマ集会であるから、身構える必要はない。
実際、記者は英国車特集の会に自分のVWカルマンギア(ドイツとイタリアの合作)で馳せ参じたのだが、イギリス車の群れの中に旧敵国のクルマがいても、皆さんおおらかでフレンドリーだった。来年も春から毎月「浅間サンデーミーティング」が開催される予定なので、Facebookで検索して情報を確認しておいてほしい。画像ギャラリーにイベントの様子の写真を多数アップしたので、そちらもご覧いただきたい。