「車両姿勢安定化制御」によりコーナリングが進化
そして最大のトピックが、「990S」を皮切りにロードスター全車にこれから搭載されることとなる「車両姿勢安定化制御(KPC)」である。
これは、コーナリング中に0.3G程度のGがかかると、リヤの内輪側だけブレーキを少し効かせるという仕組み。ロードスターのリヤサスは「アンチジオメトリーサスペンション」という構造で、コーナリング中は内側の後輪が浮き上がろうとするのだが、その際に「車両姿勢安定化制御」が作動することでボディのリヤが内輪側も少し下がって、接地感をアップ。
その結果、コーナーでのロールを抑えることができ、後ろ足が生き物のように動いて「人馬一体」の走りをさらに増しているというわけだ。
2019年5月からロードスターの主査となった齋藤茂樹さん(下記写真左)は、着任後に初めて手掛けたプロジェクトがこの「990S」となるそうだ。
「ロードスターの本質は軽さですので、あらためて軽さを突き詰めて、さらにピュアな走りの楽しさを追求しました。“S”にはリヤのスタビもLSDもありませんが、オープンデフならではのコーナー進入時の自然なフィールを大事にしてチューニングしています。そして街なかで心地よく走れるようにダンパーの減衰は限界まで下げて柔らかくした一方、ワインディングでも走りやすいように“車両姿勢安定化制御”を導入しました」
また、プロジェクトマネージャーの山口宗則さん(上記写真右)はこう語る。
「“S”グレードはエントリーグレードのように思われがちですが、もっとも軽くて初代NAに近く、ウデのある人が乗ると一番気持ちよく走れます。開発陣としては“S”が大好きで、“S”を主役に立たせるようなクルマを作りたいと思いました。リヤスタビのない“S”のような軽い仕様は日本でしか販売していませんので、ぜひ日本のオーナーさんたちに一番ピュアな設定のNDを味わってほしいです」
シンプルな装備に込められた「走り」への情熱
「990S」のルックスにおける特徴は、展示車だった「クリスタルホワイトパールマイカ」のボディの頭上をシックに飾るネイビーのソフトトップ(幌)。NDロードスターとしては初採用の「990S」専用カラーで、ほかのボディカラーでも存在感を引き立ててくれそうだ
ライトウェイトを至上命題としているため、「990S」はベースとなった「S」同様、インフォテインメントの「マツダコネクト」もナビも付かない。
潔いにも程があるインテリアだが、エアコンのルーバーはさりげなく幌と同系のブルーとしている。
また、フロアマットも「990S」に合わせた新デザイン。こちらはディーラーオプション扱いで、ほかのNDロードスターでも手に入れることが可能だ。
えてして「走り」スペシャルというと、上級グレードにハイテク装備をマシマシで搭載したマシンになりがちだ。そんななか、「引き算の美学」で軽量化を徹底し、「走りの楽しさ」を追求した「990S」には、30年以上にわたりライトウェイト・スポーツカー「ロードスター」を育ててきたマツダの矜持が感じられる。
「990S」の価格は未発表だが、ベースの「S」が約260万円であることを考えると、300万円以内に収まってくれると期待したいところ。ただ、すでにディーラーに行けば価格もわかって予約もできるとの情報も入ってきているので、気になる方はお近くのマツダディーラーに聞いてみると良いだろう。