そのほかの車載ECU
冒頭で触れたように運転支援システムや予防安全技術を採用しているクルマは電子装備の塊となっているので、車体の各所にそれぞれの動作を受け持つECUを搭載し、運転の自動化を実現しているのだ。
ただ、自動化と言ってもドライバーがなにもしないでも目的地に着くというのはまた別のレベルの話で、現在ユーザーが体験できるのは駐車支援や高速道路での各種ハンズフリー走行、渋滞追尾などだ。とはいえこれらの機能が公道で使用できることはすごいことである。
なお、こちらの制御に関わるECUにはデータ書き換えなどのECUチューニングは存在しないし、必要ではない。
先進運転支援システム ADASとは
後半はこうした先進運転支援システム用の車載ECUのことも紹介していこう。
先進運転支援システムのことは「アドバンスト・ドライバー・アシスタンス・システム」と呼び、略称がADAS(エーダス)という。日本では内閣府が主導する「SPI(エスピーアイ)」という技術革新プログラム内では「SPI-ADAS」という名称の国家プロジェクトとして研究、開発が進められている。
なお、衝突被害軽減ブレーキや誤発進抑制制御装置、車間距離制御装置などを装備したクルマは「先進安全自動車」という区分けになり、これを「ASV(エーエスブイ: Advanced Safety Vehicle)」と呼ぶ。
さて、予防安全技術や運転支援システムに関わるECUだが、エンジン制御用のECUと区別するためここではADAS用ECUと呼んでみる。
ADASの機能はクルマ各部に付けられた各種のセンシング機器の信号を各ADAS用ECUが処理。その結果を車載ネットワークで繋がるエンジンや電動パワーステアリングユニットなどのECUに指示を出しすことで、人の操作なしでクルマを制御するものだ。
ここでセンシング機器やECUと同様に重要になるのが車載ネットワーク。伝達速度が速いだけでなく、数多いデータのなかから重要度が高いものを優先して流せるネットワークシステムが必要になる。
現在では「CAN(コントローラー・エリア・ネットワーク。キャンと読む)」という通信システムを使うクルマが多い。クルマの高性能化につれてデータ伝達(速度だけでなく優先順位の選別など含む)もより高度なものが要求されてきたので、CANより高速で信頼性も優れる「Flex Ray(フレックスレイ)」という通信法も使われてきた。車載ネットワークの分野もどんどん進化していきそうだ。
ADAS用ECUを紹介
現在市販されているクルマに使われているADAS用ECUを紹介しよう。まずはフロントガラス中央上部に付けられているカメラだ。
カメラは情報を画角という面で捉えらることができるのが特徴で、単眼とステレオのタイプがある。
もちろんステレオのタイプのほうが性能は優れるが、画像データはそもそも容量が多いので画像を処理するには高性能なCPUなどが必要になるため、ある程度の車格以上でないと装備しにくい。そこで単眼カメラを使うクルマではソナーセンサーやミリ波レーダーといった別のセンシング機器を併用することで精度を高めている。
新しいところでは「LiDAR(ライダー)」という逆光など光の条件が厳しいなかで優位性を発揮でき、センシングの精度もソナーやミリ波より高いデバイスがある。
ただ、ほかのセンサーと比べて計測できる「幅」がまだ狭いので用途は限定されている。とはいえこの分野の進歩は早いので後に主流になるかもしれない。
まとめ
ECUやセンシング機器をたくさん積むASV(アドバンスド・セイフティ・ビークル/先進安全自動車)、それにHEV(ハイブリッド・エレクトリック・ビークル)、BEV(バッテリー・エレクトリック・ビークル)などは従来のクルマ好きからはちょっと敬遠されたりもする。だが、クルマとはその時代の技術の象徴であり、技術は進化する方向にしかいかないものなので、クルマ好きを自認するなら、以前のクルマもいいけど「新しいのもすごいね」というスタンスでいてほしい。