熟成させたサスペンションによってスポーティな乗り味としなやかさ両立
初代アスコットから受け継がれた、軽量で高剛性のボディに組み合わされるサスペンションも、熟成のホンダのダブルウィッシュボーン式で、イノーバ用に前輪のスプリングのバネレートを20%アップ。ダンパーの減衰力を伸び側で17%下げて、縮み側を37%アップ。後輪もバネレートを11%アップ、ダンパーの伸び側縮み側とも15%ダウンさせており、余裕あるサスストロークを確保しながらもしなやかで引き締まった足まわりとしていた。 ほかにもブッシュ類が強化され、ビスカスカップリングLSDとトラクションコントロール、4WS(4WSなし、オプション設定モデルもあり)+ABSのホンダ新次元複合型フットワーク「TCV」を効率的に働かせて、スタイリッシュながら高い居住性+実用性のイノーバに、ホンダ車に期待される軽快な走りをもたらした。
商品力はピカイチながら同門のライバルが仇となり販売は振るわず……
このイノーバが難しいポジションだったのは、わずか1年後の1993年10月に背の高いハイト系となった2代目アスコット&ベルノ店用のラファーガが登場したこと。イノーバも1994年にマイナーチェンジを受けるものの、3ナンバー車の人気はホンダとしてはインスパイアであり、さらにアコードの人気は依然として高く、イノーバは魅力的なスタイリングと優れた実用性ながら、プリモ店扱いのクルマのなかでは高価格帯ということもあって(155.8~295.6万円)、一代限りで終焉を迎える。 現在はすべてホンダカーズに統合されているが、当時はシビックと軽自動車を中心とした「プリモ店」、アコードやインスパイア、レジェンドの「クリオ店」、プレリュードや初代NSXの「ベルノ店」という棲み分けは非常に上手くいっていた。だが、イノーバにとっては結果として仇となってしまった。 2代続いたアスコット自体がヒットモデルとは言えないので難しいところだが、これが高額車の販売に慣れていた他チャンネルであれば違ったのかもしれない。商品力が高く、魅力的なスタイリングでも大ヒットとはならず。イノーバは自動車販売の難しさを教えてくれてたモデルでもあった。
■ホンダ・アスコット イノーバ2.3Si-Z(CC5型)
〇全長×全幅×全高:4670mm×1715mm×1380mm
〇ホイールベース:2720mm
〇トレッド 前/後:1475mm/1480mm
〇車両重量:1360kg
〇乗車定員:5名
〇最小回転半径:5.5m
〇室内長×室内幅×室内高:1975mm×1395mm×1140mm(サンルーフ付きは1070mm)
〇エンジン:H23A型直4DOHC16バルブ
〇総排気量:2258cc
〇最高出力:165ps/5800rpm
〇最大トルク:21.5kg-m/4500rpm
〇サスペンション 前後:ダブルウィッシュボーン式
〇ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク
〇タイヤサイズ 前後:195/60R15
〇車両本体価格:295万6000円(東京地区販売価格)