もっともリーズナブルにバイクのライディングを磨ける「トライアル」の魅力とは
私にとっての「トライアル」の魅力は何かと聞かれると、ゆっくり走る競技であること、ライディングの基本がすべて詰まっていること、そしてモータースポーツのなかではかかる費用が比較的リーズナブルであること。この3つが挙げられる。
一方で「トライアル」は、目の前にある小さな丸太を超えられただけで、それはもう大成功。子どものころに、自転車で階段を恐る恐る降りてみたときのような、「無邪気な挑戦の延長線上にあるバイク遊び」という感覚で、楽しむことができるのである。
「トライアル」という競技は、マイナーすぎてあまり知られていないだけで、ライディングを上達させたい初心者には、かなりおススメの練習法なのである。今回は、そんな「トライアル」の魅力を多くの人に伝えようと、埼玉県入間市で「入間トライアルパーク」を運営する、生田目 俊之さん主催の「入間トライアル大会」に参加した。
トライアルってどんなルールなの?
トライアルの大会は、森のなかに作られたセクションと呼ばれる短いコースをひとりずつ走行し、マシンコントロールの正確さを競う競技である。採点はミスをするごとに加点される方式で、点数は低い方が上位となる。
さらに、セクション中にはゲートマーカーと呼ばれる、少し難関な経路を通る選択肢も用意されている。そこを通過できればマイナスポイントとなるので、同じセクションでも、ライダーの技量に合わせた走行ラインを選ぶことができるのだ。そのルールも、初心者が楽しめる理由のひとつとなっている。
大会の主催者である生田目さんに、トライアルの魅力について聞いてみたところ、「ほかの競技に比べて乗り手のウエイトが高く、スポーツ性が高いこと。そして、どんなバイクでも、どんな場所でも、工夫次第で遊べること。生涯スポーツとして、楽しめる競技だと思います」と語ってくれた。
参加者に直撃! トライアルの魅力とは?
参加者の元木高明さんにトライアルの魅力について伺った。「オートバイを操作するための基本が、すべて詰まっているところだと思います」
「だから、ほんとはすべてのバイク競技は、トライアルから始めればいいと思うんですよ。日本は結構、逆の流れになっていて、私もダート競技を引退してからトライアルを始めたひとりですが、本当は、子どものころにトライアルをやって、そのあと、次の競技にいくのが理想だと思います」
しかし、そんなもっとも簡単で安全なラインでセクションをクリアするだけでも、体幹やアクセル・ブレーキのコントロール、シビアな荷重移動、そして集中力など、バイクを操るための基礎がすべて詰まっていて、やっているこっちは1本走るだけで汗だく。驚くほどの体力が、消費されているのだ。そして、この感覚が、私のトライアルライフをスタートさせるきっかけとなった。
一方で、実際にトライアルを始めてから、続けるための障壁となったこと。それは、自走では長距離移動ができず、トランポが必須という点だった。シートのないマシン形状や、約4Lという小さなタンク、そして高速に乗ることができない排気量など、一般公道を走るには不便極まりない乗り物なのである。
自走でフィールドにやってくる強者も
しかし、それも私の言い訳だったのかもしれない。今回の大会参加者のなかには、東京都世田谷区から、トライアルバイクに乗って自走して来たという猛者がいた。それが、古内 良さんだ。
「スピードも遅いし、危ないことさえしなければ、どんな人でもできる競技です。始めたばかりのころはできなかったことが、続けていくことで少しずつできるようになっていく達成感もトライアルの楽しさのひとつです!」と、その魅力を語る。
また、私にとってトライアルを続ける際の大きな障壁となっていた、現地までの移動手段についても、「トランポがないので、だいたい自走で来ています。バイクが4ストの125ccなので、世田谷からここまで下道で約1時間ちょっと。40km/Lぐらい走ってくれるので、タンクは4Lしか入りませんが、ここまでは無給油で来ることができます。所有しているクルマがフィットなのですが、前輪と後輪を外せばギリギリ積むことはできるので、ときと場合によってはトランポで参加することもあります」と、楽しそうに話してくれた。
まとめ
バイク競技をする上で、一番の障害となるのはトランポ問題だと思う。しかし、この移動のためには不便極まりないトライアルバイクですら、工夫次第では自走で競技会場まで移動可能なことに気付かせてくれた「入間トライアル大会」。 そうなると、バイクのスキルを上達させる一番の近道は、やはりトライアルの基礎を極めることだと思う。なぜなら、恐怖を感じることが少ない低速域でマシンを完璧に操ることができれば、速度が上がってもその扱い方の基本は変わらないからである。
そんな、バイクを安全に走らせるための技術が、トライアルという競技にはぎっしりと詰まっているのだ。そしてなにより、小さな上達でも大きな達成感を感じられることこそが、トライアルの一番の魅力なのだと思う。