時速88マイルで発光する「次元転移装置」も搭載
この「デロリアン・ジュニア」は2年にわたって「リライアント・リアルト」を研究し、試作車を5台製作したそうだ。彼は地元メディアのインタビューにこう語っている。
「ガルウイングのドアを完成させるために4種類のヒンジを試作しています。もし1981年当時この“DMC-21”が計画通りに発売されていれば、デロリアンの工場はつぶれなかったでしょう。当時も何百万台も売れたはずですし、現代でもそれくらい売れると信じています」
完成した「DMC-21」のボディはアルミ製のピックアップ・スタイルで、ガルウイングはリモコンで開閉。パワートレインは3気筒の850ccエンジンを搭載していて、最高速度は100マイル(約160km/h)を達成したとタイラー・デロリアンは主張している。
シートの後ろには映画でおなじみ「次元転移装置(フラックス・キャパシター)」を搭載している。映画の「タイムマシン」にちなんで、「時速88マイル(約142km/h)になると何かが起こりますよ(笑)」とタイラーは笑って言っているが、このカタチの3輪車でそんなスピードを出したい人はいないはずだ……。
予約販売受付中! ただし本家DMCとの裁判に勝てれば
タイラー・デロリアンは渾身の3輪車「DMC-21」を販売すべく、自分のウェブサイトで予約を受け付けている。価格はおよそ300万円で全世界へ発送OK。EV仕様やハイブリッド仕様も用意しているという。
しかし事前にSNSで宣伝し、満を持して今年8月にイギリスのモーターショーに出展したタイラーのもとに、すぐに本家「デロリアン・モーター・カンパニー(DMC)」の弁護士がやってきた。
じつはDMC社は1982年に倒産したあと、しばらくしてからリバプール出身のメカニック、スティーブン・ウィンという人物がDMCの在庫と商標を買い取って、アメリカのテキサスに拠点を置いて活動している。ここが創業者ジョン・デロリアンの妻との裁判で2015年に和解して、正式な「DMC」社となっているのだ。
伝説の「DMC-12」を新たに復刻しようとしているDMC社が、3輪車の「DMC-21」などというビジネスを見逃してくれるわけもなく、商標権侵害と「パッシング・オフ(詐称通用)」でタイラー・デロリアンは訴えられることに。
裁判では、彼が「ジョン・デロリアンの息子」であるかどうかは争点にならないが、ともあれ本人は「商標権を勝ち取るつもりです。裁判のあとに、自分の出自を証明するためにDNA検査も受けるつもりです」と意気軒高だ。
もし、「DMC-21」を買いたいという奇特な方がおられたとしても、すべては裁判のあとになる。この騒動の行方を、気長に見守っていただきたい。