カローラ史上の衝撃的FFコンパクトカー
このところ自動車メディアを騒がせている新型車の1台が「カローラクロス」だ。半世紀以上続くカローラの歴史のなかでも「SUV」は初めてで、そのデビューはカローラのキャラクターが変わりつつあることをひしひしと感じさせるものだ。カローラの歴史に新しい1ページを開いたといっていいだろう。
ただ、多くの人にとってカローラといえば「セダンこそ」かもしれないが、それは間違った思い込みだ。日本で現在売れているボディタイプはセダンではなくステーションワゴンだし、過去を振り返れば四角いワゴンの「ルミオン」や、3列シートの「スパシオ」といった変化球も現れては消えている。今回紹介する初代「カローラFX 1600GT」も、セダンではなく3ドアのハッチバックだが、地域によってはセダンよりも主力だったほどの人気モデルだったのだ。
名機「4A-Gエンジン」を搭載し登場
初代デビューは1984年。「1600GT」はその高性能仕様で、ボンネットに収めるのは4A-Gエンジンだ。 4A-Gエンジンといえば、同時期には同じエンジンを積むモデルとして、のちに伝説的なモデルとなるAE86型の「カローラレビン」もカローラシリーズにラインアップされていた。しかし興味深いのが駆動方式で、AE86が後輪駆動だったのに対し、FXは前輪駆動、エンジンの搭載もFXは横置きである。AE86がその前の世代の基本設計を受け継いだ構造だったのに対し、FXは5代目カローラセダンをベースにした最新設計だったからである。ただしこの違いは、AE86とFXの将来に大きな差をつける違いだったのは間違いない。もしAE86がFFだったら、のちに伝説的なモデルとはならなかっただろう。
余談だが、4A-GエンジンはAE86でFR、カローラFXでFF、そしてMR2ではミッドシップと3つの駆動レイアウトに採用された珍しいエンジンだ(トヨタではのちに3.5L V6の2GRエンジンも3つの駆動レイアウトに採用されている)。