ピカピカにレストアするより「あるがまま」の経年変化を楽しむ潮流
ピカピカの愛車を自慢するのとは対極にあるのが、ボロボロの外観やサビた塗装をアピールする「ラット」スタイルや「パティーナ」と呼ばれるスタイルだ。なぜボロボロのボディを自慢するのか? 本当は愛車を大事にしてないんじゃないの? そんな疑問を、起源をひも解きながら解明していこう。
そもそも「ラットスタイル」とは?
カーショーやクルマのファンミーティングといえば、自慢の愛車をピカピカに磨き上げて訪れるのが当然。イベント前日は徹夜して愛車を磨き、少しでも綺麗に魅せたい! というのが人情というものだろう。
今から20年ほど前だろうか、そんなカーショーに、まるで愛車を磨かないどころか、サビサビのボディのままでエントリーするクルマが出現しだしたのだ。
いや正確には、アメリカのカーショーではかなり古くからそんなスタイルは存在した。ビンテージカーの、これまで経過してきた日々を物語る凹みやサビをあえてそのままにして、愛車との長い歴史をアピール。これがピカピカのショーカーが並ぶなかで逆に目立つ結果となった。
自称か他称かは不明だが、いつの頃からかそんなスタイルをまるで「ドブネズミ」のように汚いという意味で「ラットスタイル」と呼ぶようになったのだ。
「ラットスタイル」のショーカーはここに注目!
さて、そんな「ラットスタイル」だが、当然ただただ汚いだけではカーショーで評価されるはずもなく、とくにカーショーにエントリーするラットスタイルには、多くのクルマに見られる特徴がある。
ボディはあえてボロボロのままだが、たとえばエンジンルームや足まわりなどは徹底してピカピカに仕上げて、ボロボロボディに隠されたポテンシャルを「チラ見せ」したり、足まわりを加工して通常では不可能なベタベタの車高でエントリーする。
つまり「俺の愛車はただのボロじゃないぞ!」というアピールだ。ジャンルや車種にもよるが、チューニングしたエンジンを搭載して速さをアピールしたり、高価な鍛造ホイールを装着したり。さらには最新にアップデートされた足まわりを見せたりすることで、見た目からは想像できないほど手間をかけていることを誇示するというわけだ。
ラットスタイルというワードはおそらくハーレーなどの二輪車の世界で誕生していると思われ、当初は四輪の世界ではあまり定着していない。「ビートアップスタイル」や「グリーサースタイル」と言われることもあったが、現在では多くのジャンルで「ラットスタイル」というワードが定着している。