世界中で愛されている「ロードスター」だから「異国風」カスタムもビシっと似合う
1989年に誕生した「ユーノス・ロードスター」は、かつてイギリスを中心に人気を誇った「ライトウェイト・オープンスポーツ」というジャンルを復興した立役者だ。海外でも「MX-5ミアータ」として支持され、「マツダ・ロードスター」となった2代目以降もその人気は衰えない。日本車であると同時に、もはや国境を越えたグローバルな名車なのだ。
そこで、日本最大級のロードスターイベント「軽井沢ミーティング」に集まった数々のロードスターのなかから、ヨーロッパ車やアメリカ車の雰囲気をまとった「国籍変更」なロードスターに注目して紹介していこう。
全国からロードスターが大集合するファンの手づくりイベント
10月24日(日)、軽井沢プリンスホテル&スキー場駐車場にて「ロードスター軽井沢ミーティング2021」が開催された。これは1993年から毎年、ロードスターに乗っているファンたちが手づくりで運営してきたイベントで、今年で29回目。
例年は春の開催だったが、新型コロナウイルスの影響で2020年は秋の開催となり、今年も同様に10月に。それもコロナ禍の情勢次第ということで心配されたものの、緊急事態宣言が解除され、感染予防対策を徹底したうえで無事に開催の運びとなったのだった。
当日朝、軽井沢に向かう高速道路からロードスターの姿が多く見られ、次第に濃度を増していき、途中のPA/SAでもロードスターの群れ、群れ、群れ。全国から軽井沢に駆けつけた歴代ロードスターの台数は800台以上にのぼった。突き抜けるような秋晴れに恵まれて、オープンカーの祭典として理想の日和に。
会場には初代NA型から現行の4代目ND型まで数々のロードスターが居並び、ノーマル仕様のまま綺麗に乗られている個体も多い一方、大なり小なりのドレスアップをして個性を出しているロードスターも多かった。
そのなかから、ヨーロッパ車やアメ車の雰囲気を演出して「異国情緒」を醸し出していて印象的だったロードスターを紹介していこう。
「ブリティッシュ・ライトウェイト」の魂を継承
軽量なふたり乗りのオープンスポーツカーであるロードスター。このような成り立ちの「ライトウェイト・オープンスポーツ」というジャンルは、かつて1960年代にイギリスで「ロータス・エラン」や「MG B」といった、安価で誰でも楽しめるモデルが生み出されたことで、ヨーロッパのクルマ好きたちに広がった。やがてオイルショックを経て絶滅の危機に瀕した「ライトウェイト・オープンスポーツ」を復興したマイルストーンが1989年デビューの「ユーノス・ロードスター」だった、というのはオーナーなら誰しも知るところだ。
1990年、初代NA型へ最初に追加された特別仕様「Vスペシャル」はブリティッシュ・グリーンのボディにタンカラーの本革シート、「ナルディ」のウッドステアリングなどが奢られ、ブリティッシュ・ライトウェイトスポーツを彷彿させるものだった。となると、やはり「英国流」の雰囲気で愛車を演出するオーナーは多い。
実際、純正仕様のままでも、ペイントやステッカーで「センターライン」を加えるだけでヨーロッパの「カフェレーサー」のような雰囲気が出てくるのが、ロードスターのデザインの優れたところ。
そしてノーズのエンブレムを「LOTUS」風の「EUNOS」に付け替えて、ブリティッシュ・ライトウェイトの名門「ロータス」へのオマージュとするのも、「英国流」ロードスターで多く見られる洒落っ気だ。
コスパに優れているためカスタムのベース車としても打ってつけ。国内外でほとんど無数のボディキットがつくられていて、それらを元にどうアレンジしているかも見どころ。
ずばり、ロードスターの精神的祖先「ロータス・エラン」風に「顔面整形」しているNA型などは、その意味では「王道」といえる。
クラシック・ジャガーを思わせるスマートなフロントフェイスの個体も完成度が高く、ロードスター界隈のキットの充実ぶりとイジり方の成熟ぶりをうかがわせてくれる。
フューエルリッド(給油口)をアルミ製のクラシックなデザインに変えるのも効果的なドレスアップ。リヤビューの雰囲気を一変させてくれている。
また、フェアレディZ風にも見える顔つきながら、明るいイエローでペイントしてあるため、イギリスのライトウェイト・スポーツメーカー「ジネッタ」の雰囲気も感じられるロードスターもいた。
「ロータス」といえば「JPS」! なロードスター
ブリティッシュ・ライトウェイトの総本山「ロータス」といえば、F1マシンや「ロータス・ヨーロッパ」が身にまとっていたブラック&ゴールドの「JPS(ジョン・プレイヤー・スペシャル)」カラーがおなじみ。
会場の一角に停まっていたNA型ロードスターは、カラーコーディネートと「JPS」マークは言うに及ばず、ダックテールやサイドステップに気の利いたゴールドのピンストライプまで入っていて、「JPS」を基本に独自の「ひねり」まできかせたカスタムが光っていた1台だ。
南カリフォルニアの太陽がよく似合うNC型も
ロードスターは北米市場でも昔から人気があり、今でもフリーウェイや街角で新旧ロードスターを見かける機会が多い。
会場でひときわ目立っていた3代目(NC型)ロードスターはフロントが「ノーズブラ」風の仕上げ。頭上にはピンクの「ビキニトップ」(簡易幌)、さらにリヤには大きなウイングとディフューザーを備えていて、バリバリのカリフォルニア風だ。
いたるところに「ムーンアイズ」、「ホットウィール」、「クレイスミス」(鳥のキャラクター)といったホットロッド・カルチャーのアイコンがちりばめられているのもポイントで、そのまま「So-Cal」(南カリフォルニア)でドラッグレースをしていそうな佇まいだ。
番外編:「純正」イタリアン仕様もお忘れなく
そうそう「国籍変更」といえば、現行ND型をベースにした「アバルト124スパイダー」も忘れてはならないだろう。NDロードスターをベースにイタリアデザインのボディとエンジンを積んでいて、組み立ては広島。マツダと「FCA」(今は「ステランティス」に統合)の協業によるもので、日本では販売していないが「フィアット124スパイダー」もある。
すでに述べたように、ヨーロッパの「ライトウェイト・オープンスポーツ」の系譜を継いで進化させてきたロードスターだからこそ、骨格を活かしてヨーロッパのブランドのクルマに生まれ変わることもまたカンタンなわけである。