モデューロX専用ホイールとリュクス純正ホイールを比較テスト
ホンダ車向け純正アクセサリーの開発を手掛ける、ホンダアクセスのカスタマイズブランド「Modulo」。そのコンプリートカーシリーズ「Modulo X」の最新モデルが、現行4代目フィットをベースとした「フィット e:HEV Modulo X」だ。 フィット e:HEV Modulo Xに投入されたチューニングメニューは多岐にわたる。そのなかでも目玉のひとつとなっているのが、SUPER GT 500クラスに参戦するGTマシン「Modulo NSX-GT」にホンダアクセスが供給しているホイールのデザインとノウハウが採り入れられた専用設計の16インチアルミホイールである。一般的に走りを求めるアルミホイールと言えば、高剛性を追求するというのがセオリーだろう。しかし、Modulo Xの専用ホイールはそこを疑い、部分的に”あえて”剛性を落とす、というアプローチを行っている。
そうする理由は「タイヤの性能を使い切る」ため。「ホイールもサスペンションの一部」という設計思想の下、リム部をバネのようにしならせることで、タイヤの接地面圧を高めているのだ。 果たしてこのホイールが、どんな走りの違いをもたらしているのか? 通常のフィット e:HEV Modulo Xに加え、そこからホイールだけをベース車のフィット e:HEV リュクス用16インチアルミホイールに換装したModulo Xも用意。 Modulo開発アドバイザーとしてModulo X各車の評価も担う“ドリキン”土屋圭市さんを助手席に乗せ、モータージャーナリストの先川知香さんが乗り比べてみた!
試乗その1:フィット e:HEV Modulo X &リュクス純正ホイール
一般道でも本当に違いが体感できるのか?
先川:土屋さん、おはようございます! ……すごく緊張しています(汗)
土屋:おはよう。しかし今回の企画はすごいマニアックだよね、どちらもModulo X、それもホイールしか違わないクルマの乗り比べなんてさ。ベース車とModulo Xを乗り比べるなら一発ですぐ違いがわかると思うけど。先川:正直、違いを見分けられる自信がありません。
土屋:俺だって鷹栖(ホンダのテストコースである鷹栖プルービンググラウンド。ニュルブルクリンク北コースを模したワインディング路などさまざまなテストコースを備える)を丸一日走り込んで、ホイールも5セットくらい試して、それでようやく「これが一番いいんじゃないかな……?」ってわかるくらいだから。それにホイール、とくに剛性の違いが一番よくわかるのは、ワインディングのS字の切り返し。今回走るのは一般道と高速道路だけだから、これは多分わからないよ(苦笑)。
先川:えぇ……。
土屋:まあともかく、まずはホイールをリュクスのものに換えたModulo Xから乗ってみようか。
先川:は、はい!
撮影拠点とした横浜港シンボルタワーを出て、本牧ふ頭周辺の一般道を走るふたり(と後席に乗る進行役の筆者)。土屋さんを助手席に乗せているため、先川さんは極度の緊張状態にある様子。──フィット e:HEV Modulo Xに乗るのは初めてですか?
先川:はい、初めてです。
──ベース車のフィットに試乗されたことは?
先川:あ、はい、あります。
──ベース車と比較しての第一印象はいかがですか?
先川:ベース車と比べると、小さな段差はスムースですよね。キャッツアイに乗り上げたときも突き上げ……お腹への衝撃が少ないというか。ベース車の突き上げが強いというわけではないんですが、滑らかだとハッキリ認識するほどではありませんでしたね。土屋:ベース車はしなやかで乗り心地を重視したファミリーカーだよね。今回のModulo Xはスポーツ方向に軸足を置いているから。
──サスペンションに関しては、今回スプリングはベース車のままで、ダンパーだけ変更したのが意外でした。
土屋:スプリングを換えると子どもっぽい乗り味になっちゃう。ポコポコ跳ねるんだよ。
──ベース車以上にスプリングレートを上げられなかったんですね。
土屋:テストしてみたけど、走りに品がなくなる。運動性能は良くなるけど、「これだと跳ねすぎて、上質じゃないでしょ」って。だから結局ベース車のスプリングに戻したんだよね。
──土屋さんはテストの際、後席にも徹底的に試乗されているんですよね。このフィットはサスペンションをチューニングすると、とくに後席の乗り心地が厳しくなるのではという印象がありますが……。
土屋:そうだね。だから4代目フィットのベース車は乗り心地優先にしたんだよ。それでModulo Xはスポーツに振ろうと。
──でもModulo Xは、後席に乗っていても、骨に響くような嫌な突き上げ感がありませんね。
先川:そうですね、それは運転していても思います。ドッシリしている感じがあります。土屋:ファミリーカーゆえに、ドライバーが楽しめる速度でワインディングを走るとS字での切り返しの弱さを感じたよね。
──大人のスポーツハッチであって、ヤンチャではないですよね。
土屋:そう。いい大人が乗っても満足できる走りの質感を持ったスポーツにしたかったんだ。
コーナリングの印象は?
やがて首都高速道路・新山下ICから狩場線に入り、石川町JCTを経て、片側2車線の中速コーナーが多い横羽線へ。
──コーナリングはいかがですか?
先川:不安感がなくて、乗りやすいです。ここは速度域が低いので、ベース車と全然違うというほどではないんですが、ベース車よりも安定している感じがします。タイヤがしっかり接地しているというか。狙った通りにクルマがラインをトレースしてくれるので、不安定さを感じることもないですね。
──継ぎ目の乗り心地はどうでしょうか?
先川:ベース車よりも車体の突き上げ感というか、衝撃が少ないと思います。全体的に、余計な動きが少ないような……コーナーも段差も。ベース車よりも安定していて無駄な動きがないですね。──土屋さん、開発ではそういった所を狙って作られたのでしょうか?
土屋:狙ったよね。Modulo Xはやっぱり意のままに操れるっていうのがずっと貫いてきたことだから。
無駄な動きを無くさないとね。
先川:そういった余分な、不安を感じさせる動きが、モデューロXは少ない気がします。普段乗っているクルマが足回りをチューニングしてあって車体の跳ねあがりがかなり感じるので(笑)、それを基準にしてしまうと、ベース車もModulo Xも、どちらもマイルドですけどね。それにModulo Xは、シートのホールド感が良くて、ステアリングもしっかりとグリップしてくれて握りやすいです。
──インテリアの質感に関しても、Modulo Xはかなりこだわって作られていますよね。
土屋:とくにステアリングは滑る滑らないの問題が大きいから。「これは滑るな」となったら「革の質を変えよう」と。ベース車のステアリングはツルっとした革巻だけど、Modulo Xはディンプルレザーの革に変えてあるんだよ。
先川:すごく安定しているので、運転がうまくなったような気がします(笑)。
生麦JCTを右に曲がって大黒線へ。この右コーナーは奥がキツいブラインドコーナーになっているため、これまでより若干早めのペースで進入することに。
──結構早めのペースで旋回したと思いますが、いかがでしたか?
先川:「ちょっとヤバい」と思ったんですが、予想していたよりも狙ったラインをはみ出なかったので、すごく運転しやすいと思いました。