日本よりも欧米のほうが旧車維持はしやすいが……
旧車の維持は大変というのは当たり前と言っていいだろう。日本車の場合、メーカーから出る部品は知れたもので、基本的には出ないと思ったうえで、新品があるうちにストックしたり、デッドストックや中古品を頑張って探すというのが基本だ。
一方、海外では旧車は文化ということもあって、維持が楽とよく言われる。だが、実際のところはどうかというと、海外旧車を所有して30年以上、確かに日本車に比べれば雲泥の差ではある。
欧州では補修部品供給やレストアを受け付ける部門がある
そもそも自動車メーカー自らがクラシックセンターを設立して、パーツの供給やレストアを受け付けている。これはかなり以前からで、20年ぐらい前にドイツで旧車雑誌を買って見てみたらBMWが広告を出していて、「古いパーツなんでもあります」と謳っていて驚いたことがある。
こういった活動は日本でも最近になって復刻が盛んになってきてはいるが、機能部品ですらすべてリリースされているわけではないし、ときには宣伝的な要素もあるのは事実で、正直比べ物にはならない。もちろんないよりはマシだが。
さらに日本ではあまり見られない活動として、いわゆるサードパーティ製がたくさん存在する。それもショップのオリジナルレベルではなく、部品メーカーが出していることが多いし、アメリカには補修パーツを専門に作り、販売する会社もあるほどだ。
旧車の部品を再販しても儲けが出るほど残存台数も多い
サードパーティ製が存在するというか、存在できる理由は、海外モデルというのは欧州全域やアメリカといった広い地域で売られたゆえ、残存台数が多いということある。つまり部品を作っても商売になるということだ。日本の場合は逆で、少なすぎて商売にならず、結局自動車メーカーの宣伝的な活動にならざるを得ないこともある。
また、自動車メーカーが金型をサードパーティに払い下げるということもやっていて、これだと安価に再生産できることになる。生産した部品もそうだが、金型も保管しておくと資産とみなされて税金がかかってしまうので、日本の場合は破棄せざるを得ないことがほとんどだ。
純正も含めて、部品を販売するのは基本的に車種ごとの部品専門店で、これがまたたくさんある。たとえば、筆者が所有しているイタリア車で見てみると、本国は当然のことながら、ドイツやオランダ、イギリスなど、各地に複数の専門店が存在。最近では日本のネット通販のようにお買い物かごで気軽に買えるし、国際宅急便であれば1週間もしないうちに家まで届く。
リーマンショック後は欧米でも黄色信号点灯か……
ただし、最近になって状況が変わってきてはいる。まず大きなきっかけだったのが、2008年のリーマンショックだ。ここで一気に純正部品、サードパーティ製が減った。これは欧米のメーカーでのことだが、日本でも同様で日産は古いパーツも比較的供給していたが、かなり生産中止になってしまった。
さらに海外のサードパーティ製の部品、たとえば金属部品ではバリが出ていたり、ゴム製品は劣化が早いなど、極端に質が悪くなった。なかにはないよりはマシを通り越して、なくてもいいと思ってしまうぐらいの部品もあったりするほどだ。
そして、在庫があっても価格が高騰している。とくにメーカー純正部品は1年に数回価格を改訂するのが通例だが、その度に目に見えて上昇。なかには3年間で3倍ぐらいになっている部品もあるほど。ここまでくると、あるだけでもありがたいか、あっても買えないか、微妙な感じというのが正直なところだ。
今後はさらに世界的な流れとなっているEV化が、さすがの欧米メーカーにも影響を与えるという意見が多く聞かれるようになってきた。たしかに「ガソリン車は廃止してすべてEVにします」というなかで、どれだけガソリン車、それも古いモデルの部品を作ってくれるかは微妙だろう。