時代を先取りしすぎたユーティリティ・ビークル
モーターショーに出展されたフェローバギーには、スピードとビーチ、カントリーの3タイプが用意されていました。
ラダーフレームのフロントに、フェローの2サイクル2気筒の水冷ユニットを搭載し後輪を駆動。サスペンションはフロントがコイルで吊ったダブルウィッシュボーン、リヤがリーフリジッドで、フェローピックアップのシャシーが流用される格好となっていました。
エンジンは、モーターショーの時点ではスピードとビーチにはフェローSS用と同じ32ps仕様が、カントリーにはベースモデルに搭載されている23ps仕様が搭載されていました。FRPで成形されたボディは3タイプともに基本的に共通で、ドアもないオープンボディとなっていましたが、ビーチのみはドア部分を削り取ったような形状となっていて乗降性も、少しだけ考慮されていました。 フロントウインドウはジープなどでよくみられる可倒式で、これを起こしたウィンドウフレームの上部に幌の前端を装着するソフトトップが採用されていました。またベースとなったフェローピックアップ同様、登録(軽自動車なので正確には届出)は軽商用車となり、そのために必要なカーゴスペース(荷台面積)をボディ後方に設けていて、最大積載量も150kgを確保していました。それもあって、軽トラックとして考えれば充分なユーティリティを持っていたのです。まぁ、随分モダンなトラックでしたが……。
室内(クルマは個室と言うけれど、これはテラスとかベランダじゃない? との声もありますが)じつは十分に開放的で、FRPでボディと一体成型されたダッシュボードには、フェローから転用されたスピードメーターをセンターにマウント。ドライバー正面にはワイパーやライトのスイッチが取り付けられていました。
シンプルと言えば究極のシンプルですが、決して安っぽくなかったのは、クルマの存在そのものが非日常だったからでしょうか。モーターショーではさらにフェローSSから転用されたタコメーターやナルディタイプのステアリングも奢られていましたが、市販モデルではタコメーターはなく、ステアリングもベースモデルのそれが流用されていました。
ちなみに市販されたものは、モーターショーに出展されていた3タイプのうち、ドア部分がえぐられていたビーチをベースに通常のボディに変更した1グレードのみ。ふたり乗車/最大積載量150kgのトラックとして発売されました。今見ても斬新なコンセプトでしたが、残念ながら早すぎた登場だったということかもしれません。