鉄骨造の広大な空間を活かし「趣味的ガレージライフ」を実現
クルマ2台以上を収容可能なサイズのガレージハウスをゼロから建てようとすると、木造の在来工法だと構造上の制限が大きく、また、鉄骨造やRC造だとかなりコストがかかってしまう。
それに対して、もともと1階に広い空間が確保されていて2階以上が生活スペースとなっている、いわゆる「店舗併用住宅」「倉庫併用住宅」「工場併用住宅」といった「併用住宅」を中古で購入する手法なら、ガレージ部分に最小限のリノベーション(改修)を施すだけでOK。コストパフォーマンスが抜群で、地域や物件にもよるが、土地を買う程度の価格でガレージハウスを実現することも夢ではないのだ。
ただし「併用住宅」のたぐいは、ネットの全国区の不動産情報サイトには登録されていないことが多く、地域ごとの不動産業者に個別に問い合わせるしかない。そこで江戸さんは物件を探した末、同じ二宮町の商店街にある今の物件にたどり着いたのだった。
推定築年数およそ20年の3階建て鉄骨造で、元店舗のスペースは間口5.7m×奥行き7.3mと申し分ない広さ。しかも玄関ホールにリフトが設置されていたため、後付けで住宅用エレベーターを設置することも可能だった。元が書店ということで、階段に収納棚が作りつけられていたのも、趣味で集めたアイテムが多い江戸さんには打ってつけだった。
賃貸物件だったが交渉して土地と建物こみで購入し、さっそくリノベーション。シャッターの内側にあったガラス戸を取りはらい、ガレージの天井板は外したまま鉄骨材を「あらわし」にしてインダストリアルな雰囲気に。コンクリート打ち放し風の壁紙を貼って、床板を貼りなおして、雰囲気よし、余裕もたっぷりのガレージを実現した。
現在ガレージ内には20年以上の愛車である「セブン」と、より気軽にドライブする「ポルシェ・ボクスター」の2台が収まっている。だが、じつはちょっと前まではさらにもう1台、1965年式の「フランシス・ロンバルディ・コッチネッラ」という、2代目「フィアット500」をベースにしたレアなクルマもガレージ奥に鎮座していた。小さいクルマなら、ほかに何もなければ4台詰めこめるほどのキャパシティがあるのだ。
2階と3階の住宅部分のリノベーションにはそれなりにコストがかかったそうだが、トータルでも、ここ「エリア8.5」で一般的な建て売り住宅を購入する場合より格安で収まったとのこと。つまり、普通の会社員でも無理のない予算内で、趣味のコダワリと快適なライフスペースを実現したのである。
こうして2014年に江戸さんはこのガレージハウスに入居して暮らしを営み、息子さんものびのびと成長して、今では小学生となっている。
また、ずっと二宮~品川の往復2時間の通勤生活を送ってきた江戸さんであるが、昨年からコロナ禍にともない「リモートワーク」が定着したことで、東京に出社する回数は激減。「地方移住」のメリットがデメリットを大きく上まわるようになった。
「オフィス用品の会社に勤めていますので、新たなワークスタイルの良いサンプルということで、会社の人がうちに見学に来ることもありますよ」