ガレージから地域とつながり、「壁画」を通じて新たな息吹を
こうして二宮のガレージハウスで仕事も趣味も充実したライフスタイルを実践している江戸さんであるが、彼のガレージライフは「完成してめでたしめでたし」ではない。ガレージという「場」を活かして、現在進行形で進化し続けているのだ。
ご覧のとおり、ミニカーなどクルマ関連のグッズからビンテージ・ラジオ、シューズ、その他もろもろ、趣味なアイテムが満ちあふれている江戸さんのガレージ。商店街の真ん中に位置していることもあり、シャッターを開けていると何かのお店かと思ってのぞきこむ人も多い。
そこで「エドヤガレージ」と称してガレージセールを定期的に開催し、自らのアイテムをセレクトして販売するだけでなく、仲間や地元の雑貨屋さんなどもジョインしたり、商店街の「マルシェ」と連動したりして、ガレージを地域の人々の交流の場として活用している。
江戸さんのコレクションの数々はひとつひとつがディープなアイテムで、見ているだけで時間があっという間に過ぎていく。画像ギャラリーでそれらの写真をご覧いただきたい。ガレージセールの予定は、Facebookで「エドヤガレージ」と検索すれば知ることができる。
また、昨年の秋からはガレージのシャッターと側面に「壁画」が加わり、レトロな雰囲気のただよう商店街に、現代的なアートで新しい息吹をもたらしている。
なお壁画のオジサンふたりは、左が愛車「セブン」を生み出したイギリスの自動車メーカー「ロータス」の創始者、コーリン・チャップマンで、右は江戸さんの価値観に大きな影響を与えたイギリスのデザイナー、テレンス・コンランだ。
地域を活性化する「エリア8.5」プロジェクトをアートで支援
さて、江戸さんガレージの壁画を手がけたのは、同じ二宮を拠点に活動しているアートディレクターの野崎良太さん(写真左)とアーティストの乙部 遊さん(写真右、別名“IKEMESO”)のふたりによるアート事業「Eastside Transition」である。
このふたりは藤沢出身で高校の同級生。野崎さんはイギリスやオーストラリアでキャリアを積んでから日本でアパレルやインテリア雑貨などに携わってきた。一方、乙部さんは長年ニューヨークでグラフィティなど、ストリートカルチャーを背景としたアーティスト活動をしてきた。
乙部さんが帰国して日本に住み始めたタイミングで、「アートをもっと日常に落としこんで、ハードルを下げられないだろうか?」と意気投合し、2017年からアート事業を一緒にスタートしたのだった。
そして2019年、二宮町の国道1号沿いに、乙部さん一家の住宅とアトリエとギャラリーを兼ねた「8.5ハウス」が完成。ここから、「エリア8.5」プロジェクトが生まれることになる。
このギャラリーはたちまち、二宮や国府津を拠点に活動している人たちの交流の場となり、そのなかには上記の江戸さんの姿もあった。「東海道五十三次」にちなんだ「8.5」という名前はもともと建築家の発案であるが、そのコンセプトにみんなインスピレーションを受けた。
「これからこの地域を”エリア8.5”と呼んで活性化し、次の世代につないでいこう!」と、地元の人々でプロジェクトを開始したのである。
そこで野崎さんと乙部さんは「エリア8.5」プロジェクトの一員として、壁画アートをこの地域の生活空間のなかに描いていこうと考えた。それに共鳴した江戸さんが、真っ先に自らの「エドヤガレージ」に壁画アートを描いてもらったというわけだ。
今年に入ってから壁画アートプロジェクトは本格的に動き出し、個人宅やショップ、地引網の小屋、あるいは朽ちかけていた倉庫などの壁に、乙部さんによるアートが続々と出現している。
「エリア8.5」の交流の場のひとつであり、ギャラリーとショップも兼ねる「8.5ハウス」は木曜~土曜にオープンしていて、乙部さんによるアート作品やアパレル、雑貨などを見て買うことができる。アートを身近に楽しんでほしいという趣旨ゆえ、気軽に買える価格設定だ。
有名な観光地はマスメディアに紹介されつくして、多くの人々でごった返している。首都圏に住んでいる人は、都会からさほど遠くなく、適度にのんびりした「エリア8.5」を散歩してみるのはいかがだろう? 壁画アートを探してみるのも面白そうだ。
そしてもしも「エリア8.5」が気に入ったなら、移り住んで「ちょっとゆとり」のある人生を楽しんでほしい。