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名前は凄そうだけど最近聞かない「スーパーチャージャー」とは? 最近のクルマに採用されなくなった理由

BLITZ製スーパーチャージャー

最近あまり聞かないけど地味に活躍してるスーパーチャージャーとは

 スーパーチャージャーはターボチャージャー(以下、ターボ)と同様に、エンジンを高出力化する過給器のことだ。ターボが排気エネルギーを使うのに対して、スーパーチャージャーはエンジンの回転エネルギーを活用するため、似て非なるモノである。

 かつてターボは、排ガスがたくさん排出される中~高回転域での効果が高く、スーパーチャージャーは低回転域を得意としてきた。だが、近年のダウンサイジングターボ(小排気量ターボ)の登場によって、どちらが得意とは言えなくなってきている。

昔のターボチャージャーはドッカンターボが当たり前だった!

 NA(ナチュラルアスピレーションやノーマルアスピレーションと呼ばれる)エンジンは、ターボやスーパーチャージャーのような過給器に頼らないエンジンのことだ。ターボは排ガスの力を使ってタービンブレードを回し、本来の排気量以上にたくさんの空気をエンジンに送り込んで高出力化を図るために生まれた。

 ターボエンジンでよく語られる事象としてターボラグがあるが、これは排ガスのエネルギーを活用するためにある程度の排圧が得られないと効果が発揮できず、エンジンが過給し始める回転数に達するまで少しエンジンレスポンスがかったるくなり、アクセル操作に対してワンテンポないしツーテンポ遅れることからターボラグが生じる。風量の大きなターボではその傾向がより強くなるため、ドッカンターボと言われるのはそれが理由だ。

 ただし、近年の小排気量ターボは非常に小さなターボを使っているために、厳密にはターボラグ自体は発生しているもののドライバーが気付くことはほとんどないだろう。

スーパーチャージャーはシステムの特性上高回転域が苦手

 コンプレッサーに吸入空気を送り込んで過給するのはターボと一緒だが、スーパーチャージャーは排気ではなくて、エンジンのクランクシャフトまたは電気の動力を使ってコンプレッサーを圧縮して強制的にエンジンのシリンダーに空気を送り込む仕組みになっている。

 こちらはクランクシャフトや電力(48Vシステムなど)によって作動することから、排ガスのエネルギーを使うターボとは違い過給するまでのレスポンスの良さが特徴と言える。ただしスーパーチャージャーにも弱点があり、羽根車やドリルを合わせた構造のルーツ式(ルーツブロア式)/リショルム式/スクロール式などさまざまな方式があるのだが、どれも高回転域ではその性能を発揮させにくいのが難点。

 そのために初代マーチに設定されたスーパーターボやVWゴルフなどで採用されたツインチャージャーのTSIは、ターボとスーパーチャージャーの良いところを活かすために、低回転域をスーパーチャージャーが担い、高回転域をターボが補うシステムを採用した。いま風に言えば、ふたつを組み合わせたハイブリッドシステムのひとつと言っても良いのかもしれない。

低速域では強いけどいくつかの弱点も抱えるスーパーチャージャー

 昨今、スーパーチャージャーを搭載する車種がほとんど存在しない理由を考察してみると、どの方式でもエンジンの回転エネルギーを使うがゆえに、エンジン負荷が増大してしまいどうしてもエネルギーロスが発生してしまう。もちろん低速域でトルクは向上するのだが燃費への貢献度が高くなく、高回転時ではクラッチ機構によって作動が断続されてしまうことから、ターボほど効率良く高出力できないというウィークポイントがある。

 そのうえスーパーチャージャーはターボ以上に場所を取り、重量も嵩むことがネガティブ要因となる。その反面、ターボは技術進化で低速域でもしっかり過給させることができるようになったことで、重量増やコストが嵩む傾向にあるスーパーチャージャーが姿を消していったと考えられる。

 もちろんほかにも理由があると思うが、自動車メーカーが積極的にスーパーチャージャーを採用していないことから、調達コストなどの理由も考えられ、さまざまな部分が嵩むというのが一番の理由なのではないだろうか。

低速域を補ってきたスーパーチャージャーの役割をいまは電気が担う

 ではかつてのマーチスーパーターボのようなツインチャージャーはもう生まれないのだろうか? 自動車レースの最高峰F1でも、ガソリンICE(内燃機関、エンジン)とMGU-H(熱エネルギー回生システム)&MGU-K(運動エネルギー回生システム)のハイブリッドじゃないか! という声が聞こえてきそうである。だが、市販車でもガソリンエンジンと電気のハイブリッドなど、低回転域をモーターでアシストして高回転域などのパワーが必要な場面ではエンジンが力を発揮する、欧州車に多いマイルドハイブリッドや、日本勢が得意とするシリーズ式やパラレル式の電動ハイブリッドがそれに相当する。

 そう考えると市販車の世界でもすでにツインチャージャーのようなハイブリッド機構は周囲に溢れており、環境問題が叫ばれる現在は低回転域では電気が補っていく時代なのだ。

懐かしのネオクラ世代のモデルはこぞってスーパーチャージャーを採用

 かつて日本車ではトヨタMR2やレビン&トレノをはじめ、スバル・レックスやヴィヴィオ、三菱デボネアなどに使われたスーパーチャージャーだが、やはりターボに比べればマイナーな存在だったといえるだろう。

 参考までにAE92型レビンの動力性能を記すと、スーパーチャージャー付きの1.6L 4A-GZE型が145ps/6400rpm、19.0kg-m/4400rpm、NAの4A-GE型が120ps/6600rpm、14.5kg-m/5200rpmだった(前期型)。結果、1.6Lながら2.0L並みの性能が得られたことから、効果は決して小さくはなかった。ただ、ターボや電気のほうが現在では手っ取り早いというワケだ。

じつはスカイアクティブXでもスーパーチャージャーと同じ機構を採用

 そんなスーパーチャージャーだが、じつ現在も活躍している。かつてユーノス800のミラーサイクルエンジン(オットーサイクルやディーゼルサイクル、アトキンソンサイクル同様のエンジンの方式のひとつ)で、ミラーサイクル+リショルム式コンプレッサーを商品化したマツダが、現在の最先端技術であるHCCI(予混合圧縮着火)のスカイアクティブXがそれで、スーパーチャージャーを「高応答エア・サプライ」として使っているのが面白い。

 スーパーチャージャーを補助的な空気取り込み装置としていることから、HCCIを成立させるためのアイテムであり、出力向上のための過給器としてのスーパーチャージャーとはいえないのかもしれないが、今後新たな使い方が出てくるのではないだろうか。電気やハイブリッドと声高に叫ばれる現在だが、ICE(内燃機関:ガソリンやディーゼルのエンジン)にとって最後の開拓地と呼ばれるHCCIだけに、新技術が出てくれば楽しいだろう。

 機械的なメカニカルスーパーチャージャーは市販車では終焉を迎えようとしているが、チューニングの世界ではまだまだ現存しているようだ。ターボほどの高出力化こそ難しいが、それでもNAエンジンでは叶わない高出力&大トルク化が叶うはず。興味がある方は試してみる価値はまだまだあり、現在では希少な大排気量モデル並のエンジン性能が味わえるはずだ!

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