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「シビック誕生前夜」に大ヒット! マジメな作り込みがスゴかった「初代ライフ」

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: ホンダ/原田了

自動車メーカーとしてのホンダの基礎を築いたライフ

 Nシリーズが軽乗用車のトップセラーとして快進撃を続けているホンダですが、今から半世紀も昔、オートバイメーカーから4輪メーカーに本格進出を果たすことになったN360シリーズも、快進撃を続けて連続44カ月に亘って軽自動車のトップセラーとなっていました。

 そのN360の後継として登場した軽乗用車がホンダ・ライフでした。オートバイのCB450と基本設計を同じにする空冷の4サイクル2気筒エンジンを搭載し、軽自動車の世界に100ps/Lのパワーウォーズを持ち込んだN360からは一転、新たに開発された水冷の4サイクル2気筒エンジンを搭載。まろやかな走りが好評を博したライフは、N360と同様に軽自動車のトップセラーに君臨しています。この自動車メーカーとしてのホンダの基礎を築いたライフを振り返ります。

水冷エンジン コンセプト一新で「ライフ」登場

 N360とライフ。初期のホンダの成長と躍進をけん引してきた2台の軽乗用車ですが、空冷と水冷の違いはあれど、4サイクルの2気筒エンジンで前輪を駆動する1.5ボックスカー、という基本コンセプトは同じです。しかしその一方で、高回転高出力でライバルをねじ伏せてきたN360に対して、ライフではゆったりと軽やかに走っていくイメージが漂っています。初代ライフ

 言い方を変えるなら、何よりも高出力を優先したN360に対して、ライフでは中低速回転域でのトルクカーブを引き上げるとともに、振動と騒音を徹底的に遮断するよう開発されていました。具体的には4サイクルの2気筒では特有の一次振動(ピストンの上下動に伴いエンジン回転と同期して生じる振動)がありますが、これをバランサーシャフトで打ち消すとともに、N360では大きな騒音源となっていたチェーンで駆動するカムシャフトを、コッグドベルトによるドライブに変更していました。乗り味のいい水冷エンジン

 ちなみにカムシャフトをコッグドベルトで駆動するのは、国産車としてはライフが初めて。また低公害化への一環として無鉛ガソリンに対応すべく、特殊耐熱焼結合金製のバルブシートを採用したことも、このEA型エンジンの大きな特徴となっています。

 一方、ボディに関しては2ドアに加えて4ドアがラインアップされたことが最大の特徴。4ドアの軽自動車は、それ以前にもキャロルにもあったのですが、キャロルに比べて150mmもホイールベースが長くなっていたので、室内長には格段の差がありました。具体的には有効室内長は1660mmもあって、これは全長が60cm以上も長いチェリー4ドア(初代モデルのE10型)に比べてわずかに15mm短いだけという、スペースユーティリティを誇っていたのです。初代ライフセダン

 ドア自体のサイズも大きくなり、何ら(大きな)不満なく4人乗車が可能になっていました。フロントがマクファーソン・ストラット式、リヤがリーフリジッド式というサスペンション形式はN360と同様ですが、フロントのロアアームがN360ではIアーム+テンションロッド、NⅢタウンではIアーム+スタビライザーだったものが、ライフではIアーム+テンションロッドでスタビライザーも装備されるものにバージョンアップされていました。ハードかソフトかではなく、しなやかで乗用車らしい味付けでした。

魅力的な派生モデルも続々と シビックの登場で生産は終了

 1971年6月に発売されたライフは、当初は4ドアと2ドアのセダンのみでしたが、のちにワゴンやバンもラインアップに加えられています。ライフのライトバン

 またN360の派生モデルとして70年に登場していたスポーツ・クーペのZは、1971年11月にはライフ・ベースにコンバートされ、さらのにその1年後にはセンターピラーを取り払ってハードトップに生まれ変わっています。

 また1972年の9月にはトールワゴンのステップバンが登場。さらに1973年8月にはステップバンをベースに前席後方にバルクヘッドを設けて、以後ボディ後半を荷台としたライフ・ピックアップも登場するなど、何台もの魅力的な派生モデルが誕生しています。この辺りはまた別の機会に1台ずつ、じっくりと紹介していこうと思います。ライフ・ピックアップ

 前途洋洋に思われたライフ・ファミリーでしたが、それまで免除されていた車検が新たに課せられることになり、また価格が上昇したことで軽自動車の人気が下降してきたこと。そして何より、ホンダが新たな基幹車種として小型乗用車のシビックを登場させることになり、その生産体制を確保するために、軽乗用車のライフ・ファミリーは生産を終了せざるを得なくなってしまいました。

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