バラエティに富んだ顔ぶれが揃ういい時代を振り返る
大村 崑(おおむら・こん)のオロナミンCのホーロー看板がどこにでもあったのをリアルタイムで見てきた世代にとって、同じように国産車のバンというと、普通に身のまわりにあった存在だったと思う。時代考証的には、昭和30年代の終わりから40年代にかけて。思えばそのころには、今のようにクロネコヤマトも佐川急便もDHLも走っていない時代。街なかで見かける“働くクルマ”といえば、“○○商店”と書かれていたり、日立やナショナルといったおなじみのカラーリングが施された電気屋のクルマだったりした。
すでに“日産車編”はお届けしたので、今回は“トヨタ車編”。自分で提案しておきながらあらためて振り返ってみると、やはりどのクルマも懐かしい。
発表時には全国で開催された発表展示会に20数万人が押し寄せたコロナバン
とりわけ印象に残るのは、1964年(昭和39年)9月に登場した3代目コロナ(RT40)に用意されたバン。アローラインでもおなじみの3代目コロナ自体、発表時には全国で開催された発表展示会に20数万人が押し寄せたといい、カローラの登場まで国内販売トップの座にあったというモデルだ。
写真で紹介しているのは当時の専用カタログで、バンのほかにシングルピック(ふたり乗り・500kg積み)とダブルピック(5人乗り・300kg積み)も載っている。乗用車系ではセダンや国産初のハードトップ、そして5ドアと多彩なバリエーションを用意していたが、そんな様子を今見ても、ファミリーユースからビジネスまで、いかに愛されていた車種だったかがわかる。
ちなみに乗用車系ともユニフレーム構造で、バンのエンジンは1.2LのOHV、55ps/8.8kg-mだ。比較的“近年”のモデルとして、6代目コロナ・バンのカタログ(1978年9月のもの)からも、注文装備だった木目サイドパネルを装着した写真を紹介しておく。
個性的なデザインのコロナ・マークII
もう1台、コロナ・マークIIにもバンの設定があった。写真のカタログは1968年(昭和43年)9月のもの、つまりマークIIは、誕生した時点でバン(ワゴンも)が設定されていたというわけだ。写真はスタンダードだが、上級のデラックスにはボディサイドにメッキのモールが施されるなど、なかなかの豪華仕様。ルーフはボディ後半でわずかに高められ、デザインのアクセントと荷室のゆとりを作り出していた。個性のあるリヤビューも「あ、コロナ・マークIIだ」とわかるものだった。
エンジンはスタンダードが1.5LのOHV、デラックスが1.6LのSOHC。どちらもコラムシフトで、駐車ブレーキにはステッキ式が採用されている。マークIIには以降もバンが設定されており、写真の総合カタログには5代目コロナ・バンとともに、2代目マークIIに設定されたマークIIバンの姿がある。