シリーズが実現せず幻に終わったチェイサー・スーパーシルエット
SSCCとはその名の通り、スーパーシルエットカーによるレース。というと80年代に世界的に盛況を見せていたグループ5、通称“シルエット・フォーミュラ”と呼ばれていた市販車ベースのレーシングカーが思い起こされます。2ドアのクーペ・ボディにエアロカウルを装着していましたが、モノコックフレームのキャビン部分はベースモデルのそれを利用していましたから、市販車“ベース”を謳うこともできました。
これに対しSSCCのスーパーシルエットは、外観こそ市販されているツーリングカー似のシルエットを持っていますが、カウルを剥がせば400psまでチューンした3Lエンジンをパイプ製のフレームのフロントに搭載。ヒューランド製のミッションを介して後輪を駆動するというもので、中身はベースモデル(と呼んでいいかにも疑問が残りますが)とはまったく別物の、完全なレーシングカーでした。
当初の計画ではSSCCは、1999年が最終シーズンとなるJTCCと同時開催として、台数を集めるプレシーズンと位置付けられ、2000年からの本格開催となる予定でした。しかし1999年のJTCCにはエントラントが集まらず、JTCCは1998年シーズンで終焉。SSCCは1999年からメインレースとなることが急遽決定しました。そこでJTCCをプロモートし、SSCCを企画していたTCCA(Touring Car Championship Association)では、1年繰り上げられたシリーズの立ち上げの対応を急ぎました。クルマ的にはトヨタのチェイサーを模したカウルを纏ったプロトタイプが製作され、1998年JTCC最終戦でデモランにまで漕ぎつけています。
今回紹介するチェイサー・スーパーシルエットは、そのデモランで走った個体そのものです。東京R&Dで設計したシャーシと、ムーンクラフトで設計したカウルを含めたボディを、ファーストモールディングで組み立てたもので、エンジンはトヨタ製のハリヤー用3L V6ツインターボを使用。トムスでチューニングし、400ps以上を絞り出していました。
急拵えで仕上げたこともあって、デモランでドライブを担当した関谷選手は、「マシンの開発はこれから」とコメントしたと伝えられていますが、その分、伸びしろ(期待値)も高かったと判断した記憶が蘇ります。しかし、残念ながら参加台数を集めることが難しかったことからレース・シリーズは開催されることなく終わり、チェイサー・スーパーシルエットも幻のクルマに終わってしまいました。