サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

R33GT-Rはなぜ不人気だったのか?「偉大すぎた初代」のせいで泣かず飛ばずの「2代目スポーツカー」3選+α

悲しき2代目

初代と比べられてしまうのは仕方ないのだが……

 クルマというのは機械的に優秀であれば売れるというものではない。とくに初代が高評価で大ヒットしたモデルの2代目は、商業的に苦戦するケースが多い。初代のコンセプトを踏襲し、ウィークポイントを解消。性能的には間違いなく良くなっているのに、人気が今ひとつになりがちだ……。そうした不運な(?)2目たちをいくつか振り返ってみよう。

ホンダ・シビックタイプR(EP3)

 シビックタイプRの初代はEK9。EF=グランドシビックのころから、VTECエンジン+4輪ダブルウィッシュボーンサスで、走り屋にも人気があったシビックが、EGを挟んで、1995年にEKへモデルチェンジ。

 タイプRに搭載するB16Bエンジンは、NAながらリッター100psを上まわる185psにパワーアップした。レカロシートやモモのステアリング、チタン製のシフトノブなども標準で、戦闘力は抜群。なによりFF=曲がらないという概念を覆した、画期的なFFスポーツがEK9だった。

 そんなシビックタイプRも、2001年にモデルチェンジ。2代目シビックタイプR=EP3はUKホンダで生産される輸入車で、同時期にデビューした2代目インテグラタイプR=DC5の兄弟車だ。

 エンジンは2LのK20Aにスケールアップされたが、DC5の220psに対し、EP3は215psと5ps少なめに(排気系の違い)……。シフトも一般的なフロアシフトではなく、AT車と同じくダッシュシフトで、ボディデザインもスパルタンさはかなり薄かった。

 また新しいプラットフォームはストリームなどからの流用で、EK9までのアイデンティティでもあった四輪ダブルウィッシュボーンサスは、トーコントロールリンク・ストラット(フロント)になり、スポーティなイメージは後退してしまう……。

「スーパーシビック」時代から続いていたワンメイクレースも、DC5で行われることに。「タイプRを買うのならDC5」という流れができてしまい、わずか4735台の販売台数で輸入が終了した(2005年)。

日産スカイラインGT-R(R33)

 1995年に登場した第2世代GT-Rの2代目が、BCNR33。16年ぶりに復活した先代GT-R=R32は、グループAレースをはじめモータースポーツで大活躍。チューニングカーとしても最高速、ゼロヨン、サーキットのラップタイムを次々に塗り替え、「最強」の名をほしいままにした1台だった。

 R33はその後継車として、正常進化を遂げたのだが……。例えばボディ剛性はR32に対し、ねじれ剛性を44%もアップ。とくにフロントまわりは、キャンバー剛性で35%、横剛性90%、キャスター剛性10%も高められている。前後の重量バランスも、R32が59.4:40.6だったのに対し、R33は57.5:42.5まで改善。

 アクティブLSD+アテーサE-TSの「アテーサE-TS PRO」や、油圧から電動になったスーパーHICASなどの効果で、R32の弱点だったアンダーステアはかなり解消されている。

 空力的にもR32のCd値が0.40とハイドラッグだったのに比べ、R33はリヤスポイラーを可変化したこともあり、Cd0.35~0.39と大幅に進歩。ニュルでのアクセル全開時間が15~20%も増し、R32のニュルのタイムを21秒も短縮したのは有名なハナシ。

 エンジンも同じR26DETTでパワーこそ280psと変わらないが、0.06kg/cm2のブーストアップで、最大トルクは4.2%(1.5kg-m)もアップしている。

 R32でキャパ不足と言われたブレーキも、R33からブレンボ製が標準に。これで一体何に文句があるのか、といいたいぐらいのアップデートが盛り込まれていたが、グループAという大きな舞台はなくなり、GT-Rとして初チャレンジとなったル・マン24時間レースでは結果を残せず……。国内でもスーパー耐久レースのデビュー戦で、R32の後塵を拝してしまったのが痛い。

 それ以上に、大きく重たくなったボディ、105mm延長したホイールベースをネガティブに捉えた人が多かった。全体的にシャープさ、獰猛さが薄れたスタイルが敬遠される要素になり、パフォーマンス的には決して見劣りはしないのに、第2世代GT-Rのなかでは不当に低い評価を受け続けている存在だ。まさに「機械としての優秀性と正当性は、人気とは無関係」であることを象徴している1台だ。

ホンダNSX

 2022年を持って生産終了と発表された2代目NSX。ミッドシップに3.5LV型6気筒ガソリンエンジンを搭載し、さらに3基のモーターを加えたハイブリッドシステムSPORT HYBRID SH-AWDを採用。

 合計で581psを誇る、「新時代のスーパースポーツ体験」(New Sports Experience)という触れ込みで登場したにもかかわらず、販売面では鳴かず飛ばず……。2021年夏の時点で生産台数は2558台。日本国内では464台しか売れていない。

 ここまで不人気だったのは、ホンダのスーパースポーツといいつつ、設計・開発・製造はすべてアメリカで、ちっとも国産らしさ、ホンダらしさが感じられなかったのも理由のひとつだろう。また、2400万円という強気の価格もあるはず。

 2代目NSXの発売前年から復帰した、ホンダの第4期F1参戦で、第2期マクラーレンとのジョイント時代、2015年~2018年が大低迷。パワー不足+信頼性不足で、まったくイメージアップにつながらなかったダメージも大きい。

 さらにいえば、わかりやすい対抗馬、ライバルがいなかったのも不運のひとつ。同じ価格帯、同じコンセプトの他社のクルマがあれば、それと比較し、「NSXはここが優れている」と言えたのかもしれない。だが、そうしたセールスポイントも直接のライバルもいなかったので、浮いた存在になった感は否めない。正直、スタイリングもスーパーカーらしい華々しさに欠けるし、全体的に中途半端。

 F1参戦もそうだが、ハイエンドのスポーツカーは継続して作り続け、そのブランドを高めていく努力が必要。いまのホンダにはそうした土性骨の強さ、腹が据わっている感じがみられないので、ホンダファンも盛り上がりきれないのが現状なのでは?

まとめ:攻めるのは3代目でもいいのでは?

 ほかにもマツダのロードスター(NB)などは、2代目として苦戦した例だが、2代目はやっぱり難しい。初代は、「こんなクルマを待っていた!」と歓迎される流れがあるし、同じ血統で比較されることはない。

 しかし、2代目はどうしても初代との比較になり、「俺たちが欲しかったのはこんな●●ではなかった……」といわれがち。2代目は下手に個性を出そうとせず、とにかくキープオンに徹し、冒険するなら3代目、というのがベストかもしれない。音楽でもクルマでも、ファンというのは同じものを求めてやまない人種なのだから。

モバイルバージョンを終了