エアロの素材はFRP一択からABS樹脂やカーボンが主流に
エアロパーツは基本的にFRP(繊維強化プラスチック)やABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンの3種類の成分を組み合わせた樹脂、以下ABS)、CFRP(炭素繊維)のいずれかが使われている。FRPの利点は成型のしやすさで、弾力がなく割れやすいプラスチックにガラス繊維を使うことで、強度と弾力性を持たせている。FRPといえば路面や障害物などにヒットさせると破損しやすいというイメージがあるが、意外と耐久性は高く補修のしやすさがメリットでもある。
ABSはFRPと同様に強度と柔軟性が高い素材で、衝撃に強く破損しにくいのが特徴。大量生産に向いており、製品精度の高さから、最近ではFRPに代わってABSを採用するエアロパーツメーカーが増えている。
ちなみに純正バンパーやエアロの多くはPP(ポリプロピレン)が使われている。一般的には、FRPやABSは破損した際に鋭い断面ができるウィークポイントがあり、純正バンパーや純正エアロパーツにPPが採用されるのにはそうした理由もある。
また軽量で高強度かつ炭素繊維の模様がレーシーでスタイルアップにも貢献してくれるCFRP(炭素繊維強化プラスチック)も人気。同じデザインのエアロパーツでも、素材選びによって雰囲気がガラリと変わることも覚えておきたい。
エアロスタビライジングフィンは本当に空力性能はあるのか?
市販車用に販売されているエアロパーツに空力アップの効果があるのかどうか? という疑問が付きまとう。「そんなのあるワケないじゃん!」という否定的な意見もあれば、「高速道路を制限速度で走っただけでも体感できるよ!」という肯定的な見方もある。これは当然の話で、世の中にあるエアロパーツはそれぞれにコンセプトが異なり、スタイルアップを主眼に置くものやサーキットで確実にコーナリング性能を高めてくれるパーツも存在する。
とくにサーキット派がこぞって装着しているGTウイングは、富士スピードウェイや鈴鹿サーキットなどの全体的にアベレージ速度の高い国際規格のコースはもちろん、ショートコースでもコーナリング時にリヤが安定するなど確実に効果はあると言える。
それでは前項で触れたトヨタのエアロスタビライジングフィンには、どんな効果があるのだろうか。結論から言えば、走行時の空気抵抗を低減させるため、相乗効果で燃費や静粛性にも好影響を与えることができる。
ただその理論は難しい。クルマが走行すると車体の側面やルーフ部、フロア下を流れる空気が渦を発生させながら後方へ流れるのだが、スタビライジングフィンのないクルマだと渦がボディから剥離してしまい、その効果があまり期待できない。
しかし、エアロスタビライジングフィンの突起部を通過した空気は縦回転しながららせん状に発生することで、走行時の空気抵抗を低減。そのため空気の流速が速いAピラー付け根のドアミラーベースやテールランプの側面、ルーフ後端などにエアロスタビライジングフィン(もしくはボルテックスジェネレーター)を装着することで、ステアリングの微操舵時の応答性やリヤのスタビリティ向上にも貢献するという訳だ。
実際、トヨタ(一部、ダイハツも)の新型車両の多くにエアロスタビライジングフィンが採用されていることからも、トヨタがこだわって装着しているのは事実。ドライバーの多くが効果を体感できるか否かは別にして、確かな効果があるのは間違いなさそうだ。
ボトム部のエアロパーツ装着では破損に注意が必要!
エアロパーツを装着することで、ノーマル車両にはないレーシーさやスタイリッシュさを演出することができる。反面、強度があるとはいえ縁石や路面などと接触すれば破損する恐れがある。そのためエアロパーツを装着したら、路面のギャップや駐車場のクルマ止めなどに干渉しないように注意することが必要になる。とくにローダウンしているクルマの場合は、路面とのクリアランスが狭くなっているので要注意。
また最近ではあまり聞かなくなったが、高速道路を走行中に大型のリヤウイングを落としたなど、重大事故にもつながりかねない事例もある。脱落しないようにビス留めして装着するのはもちろん、破損もエアロパーツの脱落に影響するので慎重に走らせる必要がある。
カスタマイズ効果が高く、パーツ代や塗装代、取り付け工賃も考えるとかなりの高額パーツとなるだけに、デザイン優先で選ぶことは否定しないが、素材選びやフィッティング性、車検に適合するかを重要視したい。なかには安かろう悪かろうな粗悪なエアロパーツもあり、パーツ代は安いけど取り付けに板金加工が必要で「結局、高くついた……」なんてこともある。後悔しないようにしっかり吟味してカスタムを楽しんでほしい。