実用性と走りを両立させるハイパワーワゴン
そんなハイパワーワゴンがクルマ好きにもたらしたのは、いったい何だったのだろうか。間違いないのは、走りと実用性をハイレベルで両立させた選択肢の提供だ。当時はまだ速いクルマがもてはやされ、それを好むクルマ好きも多かった。そして家族ができたときに、ハイパワーワゴンがちょうどいいクルマとなったのだ。それ以前は車体剛性の不足やサスペンションの新過不足により実現できなかった箱型ボディのハイパワーモデルが、このころから技術的に無理なく可能となったのだ。 さらには、新しい自動車文化のひとつを築いたといえるだろう。かつては速いクルマといえば実用性というウィークポイントが存在したが、ハイパワーワゴンにはそれは見当たらない。新しい実用車像だったように思える。実用的でサーキットでも楽しめるワゴンなんて、当時は欧州車でも少なかった。
ちなみに、個人的に印象深いワゴンは2002年に登場した4代目のホンダ・アコードワゴンだ。スポーツグレードである「24Tスポーツパッケージ」を愛車として購入したが、高速域におけるスタビリティの高さとワインディングロードにおける身のこなしの良さには驚くばかりだった。エンジンは200psと控えめなのでハイパワーワゴンとは言い難いが、ハンドリングの良さだけでなくロングドライブ時の疲労の少なさまで含めて「日本車もここまで来たか」と思わせる出来栄えだったことを覚えている。