ボディパーツからサスペンションパーツまで全部バラす
消耗パーツの管理と並行して、外されたボディパーツはピット前に並べられる。エアジャッキを利用してシャーシはフレームに固定され、メカニックが下に潜り込んでボルトを緩めると、パワートレインがフォークリフトで抜き出される。かくしてエンジンとギヤボックス、それぞれのエキスパートがそれぞれを外してワークショップに持ち込み、チェックする。
ギヤボックスのエキスパートによれば、設計上の走行耐用時間である30時間ごとにサービスが入り、60時間でオーバーホールを行う。6時間レースのあとなら基本的になんら問題はないはずだが、最終戦だけにチェックは全般に及ぶ。
オーバーホールの手が及ぶのはサスペンションも同じだ。サスペンション部門のエキスパートいわく「レース直後のサスペンション・コンポーネントは、ラバーで真っ黒に汚れているのが常」とのこと。
サスペンション・コンポーネントもすべてが分解され、ショックアブソーバーはあらゆる特性に瑕疵がないか、ベンチテストにかけられる。不具合があれば当然、交換だ。「911 RSR」のショックアブソーバーは走行30時間ごとにオーバーホールが必要で、走行90時間で寿命に達するという。レースウィークには通常、予備として3セットが持ち込まれるのだとか。
ポルシェのワークスならではの万全さと集中力
いわば、すべてのコンポーネンツはランタイム・リストに基づいて管理されており、1台あたり5人のエキスパートがついて、メカニックたちは包括的なメンテナンス・プログラムを通じて作業を進める。
WECは土曜にレースが行われるため、日曜から作業できるとはいえ、ロジスティックに載せるには火曜にはオーバーホール&メンテナンスを完了せねばならない。今回のバーレーン2連戦は例外的なスケジュールとはいえ、「ポルシェ・マンタイ」チームが「911 RSR」を臨戦態勢とするためのオペレーションの素早さ、用意周到さをうかがい知ることができる。
しかも、これだけのエネルギーと正確さを備えたワークス体制であっても、すでに報じられている通り、後味の悪いフェラーリとの接触コースアウトを喫し、ポルシェはGT-PROクラスの年間タイトル獲得を逃した。モータースポーツの残酷さを示す映像ともいえるだろう。