ブレーキを多用するだけにキャパシティアップが必須
クルマを操ることにおいて重要なパーツがブレーキ。減速だけでなく姿勢作りなどブレーキが関わることは多い。そこで今回のAT企画はこのブレーキにスポットを当てて、トヨタ86&スバルBRZのAT車にマッチするブレーキチューンを探っていこう。
初出:XaCAR 86&BRZ MAGAZINE Vol.15(一部加筆)
パッド交換は効果があっても一時しのぎにしかならない
コーナー進入時の減速にシフトダウンを有効に使えるMT車に比べて、フットブレーキへの依存度が高いAT車は、同じコースを走ったとしても制動距離が延びる傾向だ。すると必然的にブレーキを使っている時間が長くなるので、ブレーキの摩擦による発熱量が増え、フェードしやすい状況になる。
そのためAT車でスポーツ走行をするならまずフェードへの対策として耐フェード性の高いスポーツパッドに換えることが基本だが、ブレーキの温度が上がりすぎる原因は、使用状況に対してブレーキ容量が足りていないことでもある。だから走り込みの多い人にとって、パッドだけ交換することは効果があっても一時しのぎ的なものでもある。そこでキャリパーキットの装着だ。
今回はキャリパーとローターをサイズアップをするメリットにスポットを当てていこう。
弱い摩擦力でも十分な制動力を発揮できる
まず、キャリパーを大型化するメリットだが、キャリパーが大きくなればブレーキパッドの当たり面積も広くなるので、純正ブレーキのときより弱い摩擦力(少ない発熱量)でも十分な制動力を発揮できる。加えてキットに使われるスポーツローターは径も大きくなるので、ここでもブレーキの効きが向上。さらにローターの作りもいいので放熱性もよくなり、ブレーキ温度の安定化が図れるようになるのだ。
つまりブレーキへの依存度が高いAT車にとって、キャリパーキット装着はブレーキの効きを向上させつつ、耐フェード性も根本から解決できるチョイスということだ。
それにブレーキに余力が生まれると、パッドは効きのよさに加えてコントロールできる幅を持たせることもできるのだが、これが86&BRZをはじめとするいまどきのクルマには非常に有効となる。
AT車なら上級者向けのブレーキチューンの特性を体感できる
その理由がABSとの兼ね合いで、そもそもABSは危険回避ブレーキ時でもステアリングが効いたり制動距離を延ばさないようタイヤをロックさせない機能だが、ブレーキの掛け方で車速調整や姿勢作りを行っているスポーツ走行時にABSが介入してくるとコントロール幅が狭くなる。そのため初期タッチを抑えめにして、踏力に応じて効きが出るパッドを使ってABSとのマッチングを取るのが定石でもある。
ただ、こういったパッドは純正とはかなり特性が違うので、きちんと使うにはブレーキ操作に集中できる環境が必要だが、AT車はもともとそこを持っている。つまりAT車ならドラテクが一般レベルであっても、上級者向けのブレーキチューンの特性を体感できるということ。
MT車のようにコツコツと練習してドラテクスキルを高めていくことももちろんいいが、クルマの特徴を生かすことで、ひとつ上の走りや性能を体感することもいまの時代では当たり前だけに、AT+キャリパーキット装着は時代に合ったチューニングメニューと言えるだろう。