筑波サーキットでデビューウィン
こうして稲葉選手は、現在所属しているチームZAPSPEEDのジュニアチームに加入し、筑波サーキットで腕を磨いた。チームドライバー契約のオーディションを首席で合格するほどの腕前となり、筑波サーキットでデビューウィンすることを確実な目標として見据えていたそうです。しかし、チームからは富士スピードウェイでデビューすることを告げられます。
「筑波と富士の両方で開催されている地方選手権シリーズでデビューの機会を狙っていました。筑波で練習したので筑波には相当自信を持っていたのですが、年間スケジュールと自分がライセンスを取れるタイミングとの兼ね合いで、チームからデビュー戦は富士と提案されました。実際に富士を走ると広くて戸惑ってしまい不安になりましたね」
しかしながら2回目の練習走行を終えたときには、すでに参戦しているドライバーと同じタイムを記録するまでに。こうして挑んだデビュー戦で、見事デビューウィンを飾りました。
「デビューウィンは一生に一度しかないので絶対に成し遂げると決めていました。デビューウィンというインパクトがなければレーシングドライバーとして大成できないと思っていいたので、この点は譲れませんでしたね。実現できてよかったです」
学生生活にも変化が
こうして一躍注目を浴びるようになった稲葉選手。学校生活でも変化があったといいます。
「廊下で同級生に祝福の言葉を貰ったりして嬉しかったです。でも、一番驚かれたのは先生方でした。ライセンス取得のために免許を取ることを許可はしてくれたのですが、『どうせうまくいかないだろ』と思われていたみたいです」
デビューウィンという最高の4輪キャリアのスタートを切った稲葉選手。「夢はF1!」というかと思いきや、意外と冷静に将来を語ってくれました。
「もちろん、チャンスがあればF1を目指したいという気持ちはあります。もう18歳なので、これからF1を目指すのは厳しいと思います。個人的にはモータースポーツだけではなくクルマそのものも大好きなので、ハコ車でも活躍して、ヨーロッパのツーリングカーレースや、日本のSUPER GTなどで活躍した先にある、GT3マシンの開発ドライバーなど『クルマを造る』という仕事に興味があります。将来的には現在スーパー耐久で行われている水素エンジン車のようなカーボンニュートラルに関するレースにも携わりたいです。そういった開発ドライバーになるには英語も堪能にならなければいけません。大学進学へ向けての勉強をしていますが、英語はとくに力を入れています」
学校では英語部に所属し、近隣にある在日米海兵隊基地キャンプ富士に在住する隊員とコミュニケーションをとるなど、御殿場らしい英語学習も行ったという。
地元サーキットで現役高校生がデビューウィンというインパクトを得た稲葉選手。これからどんなキャリアを歩んでいくのか、とても楽しみな存在です。