投機目的のビンテージアイテム購入はホントに幸せになれるのか!?
70年代の国産旧車に続き80年代ネオクラモデルも価格が高騰し始め、その勢いはビンテージロレックスを凌ぐ勢いとなり、価格は倍々ゲームのように跳ね上がっている。最近ではネオビンテージがブームとなり、時計やクルマ以外にもバイク、ハイブランドバッグ、釣り道具などの趣味のギアにも影響が出始めているという。
そうなると登場するのが「投機」や「投資」を目的とした『投資家』や『転売ヤー』だ。対象となるアイテムを買い漁り、価格が高騰すると市場へと放出する輩たちが現れることで市場価格はより複雑になってしまう。今回は国産旧車とロレックスを題材に、価格が高騰するネオビンテージについて考えてみたい。
富裕層がスポロレに群がる姿はいまの旧車人気に通ずる
世界には数多くの機械式腕時計が存在するが、そのなかで「投機・投資」を目的として流通しているのがロレックスだろう。バブル最盛期には「バブルバック」と呼ばれるケースの裏蓋が「泡(バブル)」のように丸い半球形状のモデルがビンテージアイテムとして高騰。富裕層を気取れるプレーンな3針モデルとして、コンビ(スチールとゴールドのコンビネーション)のデイトジャストが大きなブームを呼んだ。
そして現在は「スポーツロレックス(通称:スポロレ)」と呼ばれるモデルが人気を博し、クロノグラフモデルの「デイトナ」、冒険家に向けた堅牢な「エクスプローラー」、ダイビング用防水時計「サブマリーナ」の高騰を続く。とくにデイトナの高騰は天井知らずの勢いを誇り、レア文字盤として知られるポールニューマンダイヤルを備えたモデルは、1000万円から3000万円もの価格が付けられている。
今から30年ほど前は100万円程度だったモデルが10倍から30倍になったということだ。また、同様にエクスプローラーやサブマリーナも市場価値が上がり続けているのが現状で、最後の砦と呼ばれていた不人気スポロレこと「GMTマスターⅡ」も、20年前には定価以下の30万円程度で販売していたにも関わらず、現在は200万円前後の価格で取り引きされている。
ではロレックスが高騰し続ける原因はどこにあるのだろうかと考えたとき、大きな理由のひとつが「中国バブル」の影響だ。大国が躍進することで生まれた莫大なチャイナマネーがロレックス市場へと流れ込み、価格高騰へと拍車を掛けている。世界中にファンが多いロレックスは、市場が安定していることもあり手放す場合にもリスクが少ない。投資・投機を目的にするにはもっとも適したターゲットなのだ。
80〜90年代ネオクラ旧車が1000万円オーバーも!?
日本国内では’70年代の国産旧車の価格が高騰し、ハコスカ(KPGC10型)やケンメリ(KPGC110型)、初代Z(S30型)、そしてダルマセリカ(TA22型)やカローラレビン/スプリンタートレノ(TE27型)など、気軽に手が出せない存在になってしまった。
その影響を受けて、最近では80〜90年代のモデルたちが「ネオクラシック」と呼ばれ注目を集めている。漫画やアニメとして話題を呼んだ「頭文字D」や映画「ワイルドスピード」、テレビゲーム「グランツーリスモ」の影響もあり、スプリンタートレノ(AE86型)やスカイラインGT-R(R32型)が高騰し始める。その影響を受けるようにRX-7(FC7S型/FD3S型)の価格も急上昇し、FD3S型のRX-7は現在400万円以上もの高値で取り引きされている。さらにR32型スカイラインGT-Rは、アメリカ国内での25年ルールが適応されたことも大きい。
生産から25年を越えたクラシックカーは排ガス規制や安全基準などを満たさなくても輸入できるというものであり、その年式を迎えたR32型スカイラインGT-Rが一気にアメリカへと輸出され、北米市場では販売されなかった人気モデルを入手するために価格が急騰。
日本国内でのタマ数が少なくなったこともあり、現在は700万円から1000万円を越えるプライスが付けられているのだ。そのルールを見越し、発売当時は「失敗作」と評されていた不人気のR33型スカイラインGT-Rでも1000万円を越える個体も現れ始めている。
保管にもお金がかかる旧車は投機目的になりえるのか!?
ネオクラシックカーを投機・投資の目的で考えたとき、その対象となる車種を見極めるのは難しい。将来的に価格が上がらなければ古い中古車として扱われ、市場価値はゼロに等しくなる。また、車検や保険を切った状態で維持したとしても、月々の駐車場や維持管理に必要な油脂類の交換、メンテナンス費用を考えると莫大な利益を期待するのは難しい。
単純に計算してみても月に1万円の駐車場を借りて保管するとなれば年間で12万円、10年で120万円、20年で240万円を消費することになる。逆にいえば30年前の旧車に360万円の価格が付けられていたとしても、そこから上記したランニングコストがかかると思うと、捕らぬ狸の皮算用で本当に沢山の利益が稼げるのかはいささか疑問でもある。
愛情を注ぎながら経年を愉しむことこそがビンテージを愛好する醍醐味
つまり価格が高騰しているからといって、自動車を投機・投資目的にするのは愚の骨頂だ。広大な土地を持ち、体育館のような倉庫を保有していれば底値の中古車を買って将来の高騰に期待するのもアリだが、土地の固定資産税や車両の維持管理費を考えれば大きな利益を生む可能性は決して高くはない。
一方、クルマと比較すれば保管費用が掛からないロレックスではあるものの、驚くような高騰が続いている昨今、格安で手に入れて爆上がりを期待することは極めて難しい。今回の結論としてはクルマも時計も本当に好きな人が愛情を注ぎながら愛で続け、気が付けば「クラシック」や「ビンテージ」になることが望ましいということだ。