市販車として最後のロータリー搭載モデルとなったRX-8と水素ロータリー
マツダの代名詞でもあるロータリーエンジン。以前ほどそのイメージは強固ではないだろうが「ZOOM-ZOOM」や「スカイアクティブ」「Be a driver.」など、現在のマツダを代表するアイコンを含めても、三本の指には入るだろうブランドイメージの代表格である。
古くは特撮TV番組、近年は漫画やアニメなどにも登場し活躍しているので、クルマにあまり興味のない人でもロータリーエンジンの名は知られていると思う。
マツダのロータリーへの執着心が「エイト」を誕生させた
そんなロータリーエンジンだが、排ガス規制の影響で2003年に3代目RX-7の販売終了とともに途絶えてしまい、ファン以外からも惜しまれる状況となっていた。RX-7がいまだに高価で取引されているのを見れば、いかに根強いファンがいるかがわかるだろう。そんななかで登場したRX-8は、マツダがロータリーエンジンを『なんとか残したい』、そんな思いから生まれたクルマだ。
RX-8の生い立ちを遡れば、1995年の東京モーターショーで発表されたコンセプトカー「RX-01」と、1999年に発表された「RX-EVOLV」に触れないわけにはいかない。おそらく「RX-01」はRX-7の4代目のコンセプトであり、「RX-EVOLV」はすでに観音開きドアの採用も見られることからRX-8の原型だったと言えるはず。
当時北米のフォードグループだったマツダは、他グループ企業とのシナジー効果を生むクルマを作らねばならず、やりたいこととやらなくてはならないこととに苦労していたと思う。だが、マツダはなんとかロータリーエンジンを残すことに苦心して、コンセプトカーを出したに違いない。
ノンターボながら軽量&高出力化を可能にした名機を搭載
結果的にマツダにとって現時点では最後のロータリーエンジン搭載市販車となってしまったRX-8を見ていくと、まず新世代の「RENESIS(レネシス)と名付けられたエンジンが特徴だ。13B-MSP型と名付けられたエンジンは、654cc×2の直列2ローター縦置きながら、吸排気系統を新設計してターボではなくて自然吸気のエンジンとして登場。210psの標準仕様と250psの高出力仕様があり、構造自体がそれぞれ異なる。
専門的になるが標準仕様は、吸気ポートがセカンダリーポートとバリアブルインテークでバルブ開閉を制御することに対して、高出力仕様はオグジュアリーポートを追加。ひとつのローターあたりにプライマリ―&セカンダリー、そしてオグジュアリーの3つの吸気ポート(2ローターなので合計6ポート)を持つ仕組みとなっていた。標準仕様は4ポートなのでこの違いで出力差が生まれ、それぞれの個性に繋がっている。
また、排気ポートも従来比で約2倍に拡大されたほか、部品点数が減らせたことや樹脂化を図ったことで軽量化を実現。ターボエンジンのRX-7(FD3S型)の13B型とは直接比較はできないが、RX-7のエンジンが163㎏だったことに対して、RX-8では124㎏と大幅な軽量化が果たしている。
仕様違いの性格の異なるパワーユニットをラインナップ
エンジンスペックを振り返ると、まず標準仕様の最高出力は210ps/7200rpm、最大トルク222Nm(22.6㎏-m)/5000rpmとなっている。対して高出力仕様は250ps/8500rpm、216Nm(22.0㎏-m)/5500rpmなので、キャラクターはそれぞれに異なったエンジンと言えるだろう。
これらをもとに高出力仕様には6速MT、標準仕様は5速MTのほか4速ATが設定された。タイヤサイズも高出力仕様が225/45R18を履き、標準仕様が225/55R16と異なっている。これによりスポーティな走りを普段使いでも楽しみたい人には高トルクを低回転域から発生する標準仕様、サーキットで速さを求める人には高出力仕様と、選択肢があるのは嬉しいのだが非常に悩ましい迷えるバリエーションでもあった。
もちろんロータリーエンジンならではのコンパクトさに触れないわけにはいかない。同社の直4レシプロエンジンに比べて吸排気系まで加えると高さは同等ながら、エンジン本体は250mmも小さく、前後にも120mm短い設計であった。このコンパクトなエンジンを可能な限り車室よりに置いているので、運動性能の面で非常に有利で、フロントミドに搭載されるのでRX-8の前後重量配分50:50を実現していた。