総生産台数は206台のプレミアムスポーツカー
日本車は退屈なクルマばかり……そんなことを口にする人は、90年代に生み出されたトミーカイラZZをご存知だろうか。
京都に存在したトミタ夢工場は、トミーカイラブランドで多くのチューニングカーを生み出しており、高い評価を集めていた。そんなトミーカイラブランドから完全オリジナルのスポーツカーとして1995年に発表されたのが、トミーカイラZZだったのだ。
ちなみに「ZZ」と聞くとかなりスポーティな印象を受けるが、その由来はトミタ夢工場の創業者2名が自らを「爺」と称し、2名の爺の夢を乗せたモデルとして「爺爺(ZZ)」と名付けたシャレたネーミングだった。
エンジンは日産SR20DE型を搭載
そんなトミーカイラZZは、アルミモノコックで作られたシャーシにFRPのボディを被せただけという非常にシンプルなもので、車両重量はわずか690kg。
そのリヤサブフレームにエンジンとミッションを搭載したミッドシップレイアウトで、後輪を駆動する。搭載されるエンジンは、コンプリートカーをリリースしていたつながりもあって日産のSR20DE型エンジンがチョイスされていた。
同時期のS14シルビアなどにも搭載されていたSR20DE型エンジンではあるが、燃料噴射装置を電子制御インジェクションからKEIHINのCRキャブに換装。最高出力は180psと690kgのボディには十分なスペックを誇っていた。
わずか2年間のみ生産された
また、生産に関しては日本ではなくイギリスに現地法人の「トミーカイラUK」を設立し、そちらで生産するという手法を取っていた。これは日本で生産して登録するには非常にハードルが高いが、少量生産の輸入車ではそのハードルが下がるという、当時のルールを逆手に取ったものだったのだ。
しかし、当時の運輸省はこの手法に待ったをかけ、少量生産の輸入車であっても特例を認めないと手のひらを返す。その後、その案は撤廃されるが、トミーカイラZZは1997年から1999年までの2年間の生産のみとなり、総生産台数は206台ほどでその幕を閉じることとなってしまった。
なお、トミーカイラはZZの後継車種としてトミーカイラZZIIを2001年のフランクフルトモーターショーで発表。2002年初頭からデリバリーとアナウンスされていたが、開発部門が売却されたことなどもあって実際に販売されることはなかった。
その後、2014年に電気自動車メーカーのGLMからEVとなり、デザインも大きくリファインされた2代目トミーカイラZZが正式にリリースされ、2021年6月末まで販売が続けられていた。