東欧と北欧のはざまの旧きよきヨーロッパ、バルト三国
日本もいよいよ冬景色になってきて、タイヤ交換をする人や、趣味なクルマを冬眠させる人も多いだろう。ロシアとポーランドの間に位置する「エストニア」、「ラトビア」、「リトアニア」のいわゆる「バルト三国」は、日本ではあまり馴染みがない国々ではあるが、中世から貿易で栄え、東欧と北欧の文化が交差して、旧きよきヨーロッパ文化を感じられる土地だ。
記者が以前バルト三国を旅したときのストリートスナップから、極寒の地のクルマ事情をご紹介しよう。
エストニア:隠れIT大国の城壁に隠れたレガシィ・アウトバック
エストニアの首都タリンは意外と遠くない。成田空港からフィンエアーでフィンランドの首都ヘルシンキまで約10時間フライトし、ヘルシンキから飛行機を乗り継げば30分かからずに到着する。
タリンは中世に「ハンザ同盟」という北海~バルト海の商業都市圏のひとつとして栄えた港町で、ドイツ騎士団や帝政ロシアの影響を受けた建築も多い。タリンの旧市街区はそんな古い街並みをそのまま残している。旧ソ連時代にはすべての建物が灰色に塗られていて、独立して自由化してからは、カラフルに塗り直された歴史を持つ。
近年は「電子政府」をいち早く実現して、IT先進国としても知られているエストニアには、セキュリティをはじめとしたIT企業が集中しているのも、日本ではあまり知られていない側面だ。
道行くクルマの圧倒的多数がドイツ車であるのは、バルト三国共通。ドイツからポーランドを挟んで地続きだという背景もあるだろう。郊外から地方にかけてはフォルクスワーゲンのゴルフ1~3が現役で走っているのをよく見かけるし、都市部にいくとメルセデス・ベンツやBMW、アウディが増えてきて、アッパークラスはポルシェのSUV「カイエン」などに乗っている印象。おおむねドイツ車のヒエラルキーがそのまま反映されているわけだ。
ちなみにタリンで遭遇したエストニアの大統領公用車はアウディA8(取材当時)だった。
市街地ではたまに日本車にも出くわし、タクシーではトヨタ・アベンシスなども走っていたが、やはり北国ということで、スバル車を一番よく見かけた。旧市街の城壁の跡を活用したガレージでは、スバル・レガシィアウトバックが入っていくシーンを目撃できたのだった。
なかでも、凍てつく街なかに路駐していたトヨタ・セリカ(T200型)には感服。エストニアは昔からラリーの盛んな土地柄で、マルコ・マルティンやオィット・タナックといったWRCドライバーを輩出している。スバル車の人気が高いのも、ラリー文化の影響が多少はありそうだ。