ラトビア:アールヌーヴォーの街を走る「カローラヴァーソ」タクシー
ラトビアは音楽が盛んなお国柄で、黒パン、ハチミツ、ビール、琥珀などが名物。欧州でも屈指の酪農の国でもある。首都リガには中世のギルドの建物がそのまま残っていて、西ヨーロッパからも多くの観光客が訪れる。
リガの旧市街地の隣には、19世紀末から20世紀初頭にヨーロッパで流行した「アールヌーヴォー」の建築が多く残っている地区もある。なかでも目をひく青い建物の設計者はミハイル・エイゼンシュテインで、のちに「戦艦ポチョムキン」などで知られる映画の巨匠セルゲイ・エイゼンシュテインの父親だったりする。
リガ市街はトラム(路面電車)やバスといった公共交通機関が発達していて、タクシーもまた多い。そこで一番よく見かけたのが、黄緑色の「トヨタ・カローラヴァーソ」。2代目「カローラスパシオ」の欧州仕様で、ラトビアのタクシー会社大手「バルティック・タクシー」が大量に採用して走らせていたのだった。
このバルティック・タクシー、同じカラーリングでフォード・マスタングもタクシー営業していたりして、どういう会社なのかとても興味深い……。
なおリガ郊外の自動車博物館を見学することができた。ここに展示されていた緑色のピックアップカーは「バルティック・ジープ」と名づけられ、ラトビアがソ連から独立を回復してから初めて、この国で製造されたクルマとなる。ロシアの「UAZ」のシャーシに、ラトビアで作ったプラスチック製ボディを取り付けたもので、10台が製造され、現在4台が残っているのだそうだ。
この自動車博物館の展示車は、ほかにもいくつか、解説ボード(英語)とともに画像ギャラリーに収録してあるので、興味のある方はご覧いただきたい。
リトアニア:カトリックの国でマイナーな欧州仕様車とふれあう
ポーランドに接するリトアニアは、かつて「リトアニア大公国」としてベラルーシやウクライナまで版図におさめていた時代もあり、西のポーランドとも縁が深い。首都ビリニュスはカトリック色の強い都市で、とくに旧市街区は地元の人いわく「教会の密度なら世界一!」なのだとか。
ビリニュスはカーシェアサービスが2012年の訪問時でもすでにかなり普及していて、「CityBee」という会社のロゴをつけたフィアット500が市内をたくさん走り回っていた。
そんな街角を歩いていると、日本でも今や見かけることのほぼない「マツダ・ファミリアNEO」の姿が! 欧州名は「マツダ323C」だ。ヒッチメンバーもついていて、真冬でもお構いなしにデイリーカーとして活躍しているようだ。
また、郊外の「マナーハウス」と呼ばれる、かつての荘園主の邸宅に泊まったら、そこのスタッフのクルマがなんと「日産アルメーラ」の5ドアハッチバック。これは5代目「パルサー」(N15型)のヨーロッパ仕様だ。実用車、大衆車の部門で愛用されている日本車を見かけるのは嬉しいものだ。
さらに郊外を移動していたら真冬の道を走っているアルファロメオ156ともすれ違った。クルマバカに国境はないのである。
というわけで、ヨーロッパのメジャーな国をひと通り旅した人にもバルト三国はオススメできるけれど、コンパクトな地域で「ヨーロッパらしさ」をまとめて味わえるため、いきなりフィンランド経由で旅してみるのも楽しいハズだ。